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神楽坂の達人

ブラッスリー・グー店長/脇阪 敏行さん

アットホームなフレンチレストラン

2013/04/25

フレンチなのに、親しみやすい、アットホームなレストラン「ブラッスリー・グー」。
いつもお客さんで賑わう予約必須の人気店にお邪魔してきました。

今回お話を伺ったのは、店長の脇阪敏行さん。
脇阪さんは6年前からこちらに務めています。お忙しい中お邪魔した私たちに、気さくな笑顔で答えてくださいました。

料理の魅力に目覚めるまで

―料理を始めたきっかけは何ですか?

大学生の頃、春休みを使って山形の旅館に泊まり込みで、スノーボードしながら調理補助のアルバイトをやっていたんだよね。そこのアルバイトには1年生から4年生まで毎冬行ってたの。俺は浪人してたから23歳で卒業だったんだけど、就職が決まらなくて。そのままそこの旅館に社員として、住み込みで3年間働いてたんだよね。そのままずっと料理を続けているうちに、「料理おもしろいな」って思って。

―そこからずっと料理に携わっているんですか?

自分がまだ何をやりたいのかよくわからなかったから、とりあえずお金を貯めて、カナダに1年半くらい行ったかな。1年間はホームステイで、英語を勉強しながらワーキングホリデーをして、残りの半年は自分が働いた分のお金で、ビザを追加してアメリカを回ってた。
カナダに行ってからも料理したいなって思ってて。カナダって、移民の国だから、いろんな食べ物があるの。インド料理とか、ジューイッシュ(ユダヤ系)とか、いろんな料理を見て、やっぱり料理っておもしろいなぁって。
で、日本に帰ってきてすぐに調理のアルバイトを探して、最初は浦和のスパゲッティ屋さんで働き始めたの。だから料理を本格的に始めたのは27歳のときかな。料理のことをまったく知らなかったから、基礎から教えてもらって。そこで5年くらい働いてたかな。

―そうなんですね。なぜ今のお店で働き始めたんですか?

店長の脇阪さん
店長の脇阪さん
基本を教わっているうちに欲が出てくるじゃん、人間って。もうちょっとレベルあげたいなって、ここにいるだけじゃだめだと思ったんだよね。
けど、普通のフレンチレストランみたいに敷居が高いお店だと結局お客さんが入りづらくなっちゃうから、入りやすくてアットホームなのがいいなと思って探してた。それで、いろいろ食べ歩きをして、見つけた1件がここ。「あ、ここいいな」と思ってここにしたんだよなぁ。ご飯食べてみて、おいしかったなぁって…こういう雰囲気のところで、働けたらいいなぁって。
で、飛び込みで「働かせてください」って言って、ここで6年。

何もわからないところから始める

―今のお店で働き始めて、ギャップを感じるところはありましたか?

前のお店はイタリアンっていうよりスパゲッティ屋さんだったから、ほとんどが和製だったんだよ。今のお店に入って知らないことがいっぱいあったから、ひたすら勉強してたね。家に帰っても電車に乗ってても、どこでも。メニュー見たりとか、本掲げて読んだりとか。

フレンチって覚えること沢山で大変そうですよね。厳しく言われたこともありましたか?

はじめの頃はむちゃくちゃ怒られたよ。だってフランス語も何もわからないし。だからフランス語の勉強から始めたな。辞書ひいたり、書いたり、ライン引いたり。また見返したときライン引いた跡を見て、「あれ、もう1回やってるんだ、俺」って。それを1年くらいはやってたよ。
当時は浦和に住んでたから、通勤に1時間半くらいかかってた。帰りは11時頃だったから、うちに着くのは夜中の12時半とか。家に帰ってからは寝るだけだったね。日曜日は定休日だから、家に帰って肉の捌き方を練習したり、とにかく普段できないことをやってた。落ち着いてきたのは3年目くらいから、下(後輩)ができてからじゃないかな。

仕事への熱意

―今もお店は忙しそうですよね。生活は変わりましたか?

朝は8時に来て、夜は11時に帰ってる。それは変わらない。で、休憩は昼3時からで、4時半から仕込が始まる。夕方6時にはお客さんが来るから、それまでには間に合わせる。
仕込みが間に合うようにするには、やっぱりスピードを上げていかないと。スピードを上げていくには自分で考えながらやっていかないと、上手くいかない。でもそれは、どの仕事をやってもそうだと思う。どうやったらスムーズに上手くできるかなっていうのは、考えれば自ずと出てくるものなんだと思う。

―体調を崩したことはなかったんですか?

体壊すことはなかったよ。つらいとしたら、それは多分、面白くないから、かな? 「やってる」んじゃなくて「やらされてる」からだと思うね。「やりたい」と思ったら、11時過ぎようが12時過ぎようが、何時になっても別に気にならないと思う。ノルマを終わらせないと、って思ってるうちに段々速くなってくるんだ、スピードが。
やっぱり経験は大事だと思うよ。あとコツと、センス。まあ俺はセンスがないから、努力だよね(笑)。「やるしかない!」っていう。

―仕事をしていて1番楽しいのはどんなときですか?

やっぱり「おいしい!」って言ってもらったとき。お客さんに「おいしかったです」、って言われるのがやっぱり1番いいねえ。

―おいしいって言われるとうれしいですよね。逆につらいときはありますか?

つらいことというと、俺はそんなにないかな。まぁ体力的なものもあるけど、お客さんが食べ物を残すとか、そっちのほうがつらいと思うし、気になる。「しょっぱいのかな」とか、「薄いのかな」とか。そういうのを考えるね。料理の見直しをする。でもそれで根本的に味付けを変えるってことはない。
俺が教わったのは、「100人いたら、100人が同じ味をおいしいと思うのは無理。全員がおいしいっていうのはありえない。だから自分の味を貫いていくしかない」っていうこと。だから、それについてくるお客さんに来てもらうしかないと、俺は思う。この味がおいしくなければ、もう来ないのはしょうがない、追う必要はないって。
全員に合うような味覚を探してたら、自分が何をやっているのかわからなくなる。お客さんのニーズに合わせていくのもいいんだけど、そればっかりやってると、たぶん、あちこちになっちゃって、逆にお客さんが離れていっちゃうと思うんだよね。
だから、自分の道を一本貫いたほうがいいと思う。俺もここに来てこの味を受け継いでいる。

「やりたいこと」を考える

―かっこいいですね。私も就職活動で、周りを見ると焦っちゃって。自分を保つって難しいなって思います。

多分、俺が思うには、まず自分がやりたいことを探さないと、進まないと思うんだよね。あのころは俺もわかんなかったけど。別にOLさんでもいいし、役職に就きたいとか、開発したいとか。
そういうのがあると、自分が変わってくるんじゃない?そうすると別に周りを気にしないと思うよ。周りとか、全然どうでもよくなると思うよ。自分がやりたいことだから。でも、それを見つけるのはなかなか難しいよね。キッカケがないと。それも経験だと思う。
俺も就職活動はしたけど、あのときは全然わからなかったね。とりあえず行くだけ行く、みたいな。でも自分がやりたいのかやりたくないのかよくわかんない状態で、羅列された就職の案内とか見てもパッとしないし、何やりたいのかもわかんないって思ってたなぁ。とりあえず給料いいかなとか、休みがあるとか、そんなことばっかり考えてた。
自分のやりたいことをしっかり固めないと、多分何やっても上手くいかないと思う。やる気と、情熱がないと。と、俺は思うけどね。

―将来的にやりたいことはありますか?

それはもう自分のお店を持つこと。今はもう、そのためにやってるから。でも、家族を養っていかないといけないから、不安もあるね。お客さんが来ないと、話にならないから。
でも、あんまり気にしてないんだ。始まっちゃえば…、まあやっちゃえっていう感じ。基本的に女性のほうが不安だと思う。旦那さんの収入が安定してたほうがいいとか。わざわざ冒険しなくてもいいんじゃないの、とか。
うちの奥さんに、それはないけどね。

新しいお店ができたら是非行ってみたいと思います!脇阪さん、本日はありがとうございました!

脇阪さんのひとつひとつの言葉から、気取らないけれど芯の通った気持ちが伝わってきました。
仕事に対するまっすぐさを感じ、いつもお店が元気な理由がわかったような気がします。
私自身も、更に「ブラッスリー・グー」の、そして脇阪さんのファンになりました。
しんじゅくノート学生記者 泉美緒
ブラッスリー・グー
 住所:東京都新宿区矢来町82番地
 電話番号:03-3268-7157
 営業時間:11:30~14:30(13:30 LO)、18:00~21:00
 定休日:日曜