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神楽坂の達人

龜井堂/倉木育子さん

~地域に愛されて17年! 裏通りに佇むパン屋さん~

2013/11/29

神楽坂上にある赤城神社付近を歩いていると、ひときわ可愛らしいパン屋さんが目に入りました。
さっそく店内に入ると、「いらっしゃいませ」と笑顔の店員さんと美味しそうなパンたちが迎えてくれました。
そして、店主である倉木育子さんにお話を伺うことができました。
こちらが龜井堂さん。緑色のドアとカメのマークが目印です♪
こちらが龜井堂さん。緑色のドアとカメのマークが目印です♪

これまでの龜井堂

-倉木さんはどのようなきっかけで龜井堂で働かれるようになったのですか。

パン屋の嫁なんです。
さかのぼること17年前、銀座の数寄屋橋のアーケードのところでパン屋をやっていました。
そのアーケードでは、お菓子・食べ物関係のお店がその通りにあったんですが、いつのまにか人通りが少なくなってお店が撤退していって、龜井堂自体の売り上げも悪くなったので、どこか探さなきゃ、ということで龜井堂も撤退したんですよ。

それで、もともと50年前から神楽坂にパン工場があって、その駐車場で、試験的に大学の文化祭のようにテーブルを出して、午前中だけパンを売ったんです。
私は専業主婦だったんですが、手伝わなければと思い、自分から手を挙げて手伝うようになって、今日に至ります。

バブルも終わった当時は、神楽坂は寂しい雰囲気だったんですよ。
大久保通りから飯田橋はにぎわっていたんですけど、大久保通りからこっち(神楽坂上)は上がってきてくれなかったんです。
でも、なんとかこっちでお店をやれないか、と考え、テントで10か月もリサーチしたんです!

-なんのリサーチですか。

ほんとに商売ができるのかというリサーチですね。
午前中、数はたくさん焼かなかったけれども、ここで店舗を構えたらお客さんが来てくれるのか不安で、すごく勇気のいることでした。
大体、20代の女性が何人くるかとか、年代別、性別ごとにリサーチをして、結局これだったらいける!ということでゴーサインを出してオープンしました。
2013年11月で17年目になります。
1年1年やっていくうちにお客さんが増えてきましたね。

-だんだんとお客さんが増えていったんですね。

ええ、そうですね。
本当に少しづつお客様が増えていく感じで、広告料もたくさんかけられなかったから、はたしてこんな裏通りにお客さんが来てくれるのか不安だったんですけども、徐々に知れ渡って、神楽坂自体も人気になってきて、今に至っています。
美味しそうなパンがずらりと並びます♪
美味しそうなパンがずらりと並びます♪
-神楽坂にオープンしたのは、元々の工場があったからということですか。

はい。
数寄屋橋のほうでやっていたときよりは、アツアツのパンが随時出せるし、職人が常に中にいるので、お客様からの生の声が全部、すぐに伝えられるんです。
なのでかえって、数寄屋橋から神楽坂に移動してよかったなと思います。
だから、お客様のリクエストからできたパンっていっぱいあるんですよ。
クリームパンもお客様からのリクエストでできたんです。

-なぜ神楽坂に工場を建てたのですか。

主人や両親の元々の住まいだったんです。
土地を買うお金もないので、家を壊して、ここにパン屋の工場を建てました。

-自然な流れだったんですね。

そうですね。

そのころは神楽坂駅もなかったし、東京オリンピックの時に東西線が増えて、高田馬場~九段下までできたんですけど、当時は飯田橋まで歩いてて(笑)
高いビルもなく、とてものどかなところで、富士山も見えたんですよ!

-神楽坂はかなり変わって進化したんですね!

神楽坂の魅力

-神楽坂の魅力はなんだと思いますか。

嫁に来たころは、花柳界でもっともっと芸者さんがいて。
東京都内なのにこんなに雰囲気のある場所って珍しいなって思いました。
夕方になると、日本髪を結って着物を着た芸者さんが飯田橋の料亭に歩いて行かれるんですよ。
子どもと散歩しているときに、情緒のある風景を目の当たりにして、なんて素敵なところなんだろうと感じました。

バブル崩壊後、立派な老舗の料亭がどんどんなくなっちゃって。
でも今から14年前くらいに神楽坂が脚光を浴びて、フレンチとかイタリアンのお店も増えたんです。
暁星中学校・高等学校の中にフランスの学校があるので、フランス人も多くて、「神楽坂の石畳が自分が住んでいたフランスに似ている」とおっしゃっていて。
それを聞いて、日本の古い文化が継承されていながらも、新しいものと古いものの良いところが融合して、神楽坂のカラーがうまい具合にマッチしていると感じました。
これは外国人の方に教わりましたね。

大人気! クリームパンの秘密

こちらが人気No.1のクリームパン。<br>クリームがたっぷり入っているので、<br>トングではなくフライ返しでパンをとります。<br>
こちらが人気No.1のクリームパン。
クリームがたっぷり入っているので、
トングではなくフライ返しでパンをとります。
-お客さんの要望でクリームパンが誕生したということですが、やがて人気商品になった経緯を教えてください。

約10年前に、シュークリームのカスタードにはまってくださった中年の男性からのリクエストがはじまりです。
「昔懐かしのグローブ型のクリームパンを、ぜひシュークリームに入っているカスタードクリームでつくってくれませんか?」というものでした。
職人も、「他にはないようなおいしいクリームパンをつくりたい!」と意気込んでくれました。
そして職人は、さまざまなパン屋さんのクリームパンを食べて、「カスタードがノリっぽいな~おいしくないな~」などと言って研究していました。
龜井堂の職人は、パン職人ではなくケーキ職人なので、「普通のではなく、おいしいものを作りたい」と言って、半年間毎日毎日試作を作って、やっとできたんです。
材料やレシピもほかとはちょっと違う、ケーキの材料で作っている感じです。

-クリームパンは一番人気ですか。

そうですね、クリームパンができてからはずっと人気で、そのリクエストしてくれた男性もとっても喜んでくださいました。

味+雰囲気も持って帰ってほしい

店内の様子
店内の様子
-お店の売りや、龜井堂のここを一番推したい!というところはありますか。

裏通りなので、ここまで足を運んでくださったお客様を、一期一会で大切にしたいなと思います。
おいしいパンを買ってくださることに加えて、神楽坂の雰囲気やお店の雰囲気(スタッフの笑顔等)をトータル的にまとめておうちに持ち帰っていただきたいですね。
それは私の望みでもあります。
私は、なにか食べた時に、「これ買ったお店のあの店員さんとあんな会話したなぁ」なんて思い出したりします。
そのように、お店の雰囲気も持って帰っていただいて、食べたときに、人の温かさも感じることができたら素敵だなと思いますね。

-やはり接客も大事ですよね。

そうですね。
スタッフにも、一期一会ということを言っています。

スタッフやお客様に支えられた

-17年やってきて、嬉しかったこと、やりがいはありますか。

テントで10か月のリサーチをしていたときにお客さまから、「頑張っているんだから、そろそろお店にしてもらえば?」と応援してもらったり、「こういうパン作って」というリクエストをもらったりしたんですね。
この辺にお勤めのかたも、「お店になってよかったですね」と、温かいお言葉やプレゼントをくださったことが、なんて幸せなんだろう!と思いました。
自分たちだけでオープンしたのではなく、地域の人とともにオープンできたと思えたのが嬉しかったですね。

-大変だったり、つらかったことはありますか。

ん~…プライベート的なことになってしまいますが、主人の母の介護と同時にお店をやっていたことですね。
お店があったから支えられて介護も頑張れたし、相乗効果があって、乗り越えられたと感じています。

-では、お店をやっていること自体は大変ではなく、プラスだったのですか。

そうですね。
助けられたっていうか、気持ちの切り替えができたし、本当だったら、疲れて滅入っちゃうのに、気持ちをすっと切り替えて、「んっ」てね。
お客様にとっては、介護しているのに大変っていうのは全然わからないことだし、そこはちゃんと切り替えてね。
なんといってもお客様とうちのスタッフの笑顔に支えられました。

-みんなで協力し合って、ということですね!

そうですね。
スタッフが朝起きて、「今日も一日仕事か…」と憂鬱なままお店に来られると嫌なので、「仕事行こう♪」って思ってくれるような、笑顔で楽しい職場であってほしいです。
スタッフが心地のいい場所にすることを大切に、スタッフ同士のコミュニケーションをたくさんとるようにしています。
くつろげる飲食スペースもあります。
くつろげる飲食スペースもあります。
小学校2年生の子たちが、毎年工場見学で龜井堂にきているんですが、その工場見学に来た子どもが、大学生になって、龜井堂のスタッフになってくれたりとか、それは本当に嬉しいですね。

小さい子どもが100円~200円もって、きてくれるようなお店であることが理想だし、おじいちゃんおばあちゃんが車イスでもきてくれて、ここでたべて休憩して、寄り道してくれるようなお店がいいですね。
老若男女みんながきてくれるようなお店が理想です。
-一期一会のほかに仕事をしていくうえで大事にしていることはありますか。

「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」は自分の人生でも大切にしている言葉としてあります。
人間として、謙虚さを忘れてはならないと思っているので、「謙虚」という言葉はいつもあります。

龜井堂の今後...

-今後、店舗を増やす予定はないのですか。

ないですね。
そのほうが職人に負担をかけずに、味を守れるかなと思って。
うちの店は、コミュニケーションをもってやっていきたいですね。
うちのカラーは、ほどよいお客様とのコミュニケーションで、味+雰囲気も持ち帰っていただきたいので、お客様に粗相があってはいけないし、それは大事にしていきたいので。

-倉木さん自身はこれからどうしていこうとお考えですか。

若い方を前面に、仕事がしやすい雰囲気にして、私は将来的に縁の下の力持ち的な存在になりたいですね。
なにかあったときは私がいるから、というかんじにしておきたいです!
-お忙しい中、ありがとうございました!

「パンの味だけでなく、お店の雰囲気、神楽坂の雰囲気もすべて持ち帰ってほしい」
倉木さんのこの言葉に私はとても感動しました。
お客様ひとりひとりを大事にしていることがひしひしと感じられたからです。

神楽坂にお立ち寄りの際は、ぜひ龜井堂へ。
きっと素敵な出会いが待っているはずです♪
しんじゅくノート学生記者 大室 世奈
神楽坂 龜井堂

【住所】〒162-0825 東京都新宿区神楽坂6-39 亀井堂ビル1階
【アクセス】東京メトロ東西線神楽坂駅1番口 徒歩1分
【TEL】03-3269-0480
【営業時間】[月~金]8:30~19:00 [土]9:30~18:00
【定休日】日曜、祝日

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