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新宿人御用達 名店・名品

〔早稲田鶴巻町〕和菓子処 大黒屋

地域に根ざして親しまれ続けてきた町の和菓子屋さん

2013/01/18

地元の人々が気軽に立ち寄って普段のおやつを購入

3年前に建て替えたばかりの店舗。<br>気軽に寄れて、心が安らぐ“町の和菓子屋さん”といった雰囲気。
3年前に建て替えたばかりの店舗。
気軽に寄れて、心が安らぐ“町の和菓子屋さん”といった雰囲気。
早稲田大学の近くにあり、学生街として発展してきた「早稲田鶴巻町」。今回はこの地域に古くから根ざし、地元住民にとってなくてはならない店「和菓子処 大黒屋」さんをご紹介します。

大黒屋は大正8年(1919)に創業。第二次世界大戦後、深刻な物資不足の影響により一時店を閉めますが、昭和25年(1950)に営業を再開し、現在に至ります。
ショーケースに15~16種類のお菓子が並ぶ店内。お赤飯を販売しているのも町の和菓子屋さんらしい。
ショーケースに15~16種類のお菓子が並ぶ店内。お赤飯を販売しているのも町の和菓子屋さんらしい。
大黒屋という店名は、初代が修行した店の名前が「大黒屋」だったことに由来。現在は二代目の青山憲次さんと三代目の哲也さん親子が技と味を引き継ぎ、季節の生菓子や手土産にもぴったりの焼菓子、おやつについつい欲しくなる饅頭や団子などを手作りしています。
和菓子処 大黒屋
■住所:新宿区早稲田鶴巻町522
■アクセス:東京メトロ東西線早稲田駅より徒歩6分
■TEL:03-3203-1654
■営業時間:9:00~18:30
■定休日:日曜(お彼岸など季節によっては営業することもあり)

お客さんの要望に応えるべく手仕事をこつこつとまじめに

団子105円。甘辛のみたらしが<br>たっぷり絡んで、おこげが香ばしい。
団子105円。甘辛のみたらしが
たっぷり絡んで、おこげが香ばしい。
大黒屋で特に人気なのは団子、どら焼き、栗饅頭、かぼちゃ饅頭、お赤飯。近ごろでは二代目の憲次さんが焼き上げるカステラも、地元のお年寄りを中心に買っていく方が多いそうです。

「素材にこだわり、小豆は北海道産です。お赤飯の餅米は、厳選したものを使用しているため価格もそれなりになりますが、その分おいしいと思います」と、三代目の哲也さんがまじめな面持ちながらもにこやかに話します。
芋ようかん140円。10~3月の限定販売。<br>食べやすい大きさで、何個でもいけそう。
芋ようかん140円。10~3月の限定販売。
食べやすい大きさで、何個でもいけそう。
こしあん、つぶあん、白あんの3種のあんこをはじめ、お菓子はすべて手間暇かけた手作り。「できるかぎりお客様の要望にお応えしたいんです」とおっしゃるように、予算に合わせてお赤飯の量を加減したり、団子の大きさを変えたり、個人店ならではの融通がきくのがまた嬉しいところです。
どら焼き160円。皮がふんわりと<br>口の中で溶けていくのがたまらない。
どら焼き160円。皮がふんわりと
口の中で溶けていくのがたまらない。
すあま140円。米粉を蒸して、砂糖を<br>混ぜた甘い餅。かわいいピンク色。
すあま140円。米粉を蒸して、砂糖を
混ぜた甘い餅。かわいいピンク色。
かぼちゃ饅頭140円。30年前から定番。<br>あんこにバターを混ぜた洋菓子風の味。
かぼちゃ饅頭140円。30年前から定番。
あんこにバターを混ぜた洋菓子風の味。
カステラ240円。卵の黄身の割合を<br>多くしているため、コクのある味わい。
カステラ240円。卵の黄身の割合を
多くしているため、コクのある味わい。

地域とのつながりを大切に、祭りの日はフル回転で操業

お赤飯にはささぎ、あんこには小豆を使う。<br>枡に入ったほうがささぎで、<br>手に持ったほうが小豆。<br>ささぎは煮たときにつぶれにくく、赤い色が<br>よく出るので、お赤飯がきれいに仕上がる。
お赤飯にはささぎ、あんこには小豆を使う。
枡に入ったほうがささぎで、
手に持ったほうが小豆。
ささぎは煮たときにつぶれにくく、赤い色が
よく出るので、お赤飯がきれいに仕上がる。
大黒屋では地域とのつながりも大切にしています。「お寺や神社の行事や町内会の催し物で紅白饅頭やお赤飯の注文をいただくことが多く、たいへんありがたいです。祭事が重なった日は神輿をかつぐ暇もなく、作業場にこもってもくもくと仕事していますよ(笑)」と哲也さん。

店舗前の早大通りは木々が連なり、心が安らぐロケーション。「早稲田は学生さんが多くてにぎやかな町ですが、この通りはそのわりに落ち着いています。私は生まれてからずっとここに住んでいるので、愛着もひときわです」

早大通りでは1年に2回、春と秋に「鶴巻町フェスティバル」を開催。模擬店が並ぶとともに音楽やダンスなどのプログラムが繰り広げられ、毎回何千人もの人が訪れます。「フェスティバルの日は特別に山菜おこわを作って販売します。前日から100食分 20kgの餅米を水につけ、朝からせいろをフル回転させて作業場もお祭り状態(笑)。たいへんですが、楽しいですね」
早大通りの中央分離帯にはケヤキ、<br>歩道にはしだれ桃が植栽。<br>4月第1日曜開催の鶴巻町フェスティバルでは<br>桃が見ごろに。
早大通りの中央分離帯にはケヤキ、
歩道にはしだれ桃が植栽。
4月第1日曜開催の鶴巻町フェスティバルでは
桃が見ごろに。
ふっくらもちもちおいしいと評判のお赤飯。<br>皮を1つ1つ剥いた栗入りお赤飯(秋季限定)も人気。<br>お赤飯(小)350円、栗入りお赤飯400円。
ふっくらもちもちおいしいと評判のお赤飯。
皮を1つ1つ剥いた栗入りお赤飯(秋季限定)も人気。
お赤飯(小)350円、栗入りお赤飯400円。

親子代々で受け継いできた和菓子の味わいにほっこり

60年前から使っているという<br>餅つき機。臼の部分が石造り。
60年前から使っているという
餅つき機。臼の部分が石造り。
さて、大黒屋の作業場を覗かせてもらうと、和菓子を作るための機械がずらり。2台の餅つき機に小豆を炊く圧力釜、あんこを炊く銅鍋……。さすが古くからのお店だけあり、哲也さんが生まれる前からのものもあるそうで、長く大切に使われてきたことが伺い知れます。

「子どものころは親父が朝5時から生菓子を作り、それから朝ごはんという生活。餅米や小豆が炊き上がる匂いで目を覚ましていました。ときには仕事をする姿を隣で見ながら、どら焼きの焼きたての皮をもらって食べたり、炊きたての餅米に塩をかけて食べたり、おいしかったですね」と哲也さん。

「早大通りはそのころとくらべると青果店や魚店などがなくなり、少し寂しくなりました。もっとたくさんの人に訪れてもらいたいので、名物のお菓子を作りたいと考えているところです」。地域を盛り上げようと地元の人々と関わり合いながら、親子代々で手作りしている和菓子。熱いお茶といっしょに味わえば、きっと心がほっこりと温まるでしょう。
小豆を炊く圧力釜。この釜で<br>一度に7~8kgの小豆が炊ける。
小豆を炊く圧力釜。この釜で
一度に7~8kgの小豆が炊ける。
あんこを炊く銅鍋。熱伝導がよく、<br>全体にまんべんなく火が通る。
あんこを炊く銅鍋。熱伝導がよく、
全体にまんべんなく火が通る。
「昭和三十一年」と書き留められたふるい。<br>「昔のものは壊れにくいですよね」と哲也さん。
「昭和三十一年」と書き留められたふるい。
「昔のものは壊れにくいですよね」と哲也さん。
小豆などの材料はいまでもこのはかりで量る。<br>デジタルよりも使い慣れている。
小豆などの材料はいまでもこのはかりで量る。
デジタルよりも使い慣れている。