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新宿人御用達 名店・名品

〔西新宿〕手打麺処・郷土名物 三国一

新宿の発展とともに歩んできた社長さんの個性豊かな創作うどん

2013/01/25

子ども時代の苦労を乗り越え、露店マーケットから出発

昭和20年(1945)の終戦時、見わたす限りに焼け野原が広がっていた「西新宿」。今回はこの新宿の西口に2店舗、東口に1店舗を構える「手打麺処・郷土名物 三国一」さんをご紹介します。
三国一の社是を掲げる橋本賢社長。<br>今年平成24年(2012年)に米寿を迎える。
三国一の社是を掲げる橋本賢社長。
今年平成24年(2012年)に米寿を迎える。
「手打麺処・郷土名物 三国一」を経営する社長・橋本賢さんは埼玉県所沢の出身で、6人兄弟の長男。尋常高等小学校を中退して丁稚奉公に出たり、お父さまを早くに亡くされたり、子どものころは大変な苦労をされたそうです。

戦争下で受けた徴兵検査では“甲種合格”。一刻も早く兵役に就き、お国のために役立ちたいと願うなか、航空隊の特別幹部候補生となり、浜松から宇都宮に転属になったところで終戦を迎えました。

昭和22年(1947)、知り合いに誘われて上京。「新宿駅周辺に立った露店商のマーケットで働き始めたんだよ」と、橋本さんが懐かしそうに話します。「食料配給制の時代でね、みんな食べものを隠れて売っていたんだ。そのマーケットの名残が“思い出横丁”。そのころは今のJR西口改札のあたりまでずっと続いていたんだよ」
新宿アイランドタワー地下1階にある<br>三国一アイランドイッツ店。
新宿アイランドタワー地下1階にある
三国一アイランドイッツ店。
新宿アイランドタワーの広場から見上げると、<br>高層ビルが周囲をぐるりと囲む。<br>
新宿アイランドタワーの広場から見上げると、
高層ビルが周囲をぐるりと囲む。
手打麺処・郷土名物 三国一
ホームページ:http://www.sangokuichi.co.jp/

アイランドイッツ店
■住所:〒163-1390 新宿区西新宿6-5-1 アイランドタワー地下1階
■アクセス:東京メトロ丸ノ内線西新宿駅より徒歩2分
■TEL:03-3346-3591
■営業時間:11:00~L.O.22:40(土・日曜・祝日は~L.O.22:00)
■定休日:無休

西口店
■住所:〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-13-10 西新宿昭和ビル
■アクセス:JR新宿駅西口より徒歩5分
■TEL:03-3344-3591
■営業時間:11:00~23:00(L.O.22:30)
■定休日:無休

東口店
■住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3-24-8 モアセンタービル
■アクセス:JR新宿駅東口より徒歩3分
■TEL:03-3354-3591
■営業時間:11:00~23:00(L.O.22:40)
■定休日:無休

富士山を見つめて意を決し、商売に身を投じた日々

江戸名物のなべやきうどん<br>全国のさまざまな鍋物うどんも揃う。
江戸名物のなべやきうどん
全国のさまざまな鍋物うどんも揃う。
「小田急百貨店や京王百貨店が建っているあたりからは、富士山が見えたんだ。当時はまわりに何も建っていなかったからね。いろいろと思い出すよ。拾ってきた進駐軍の飛行機の羽根を鉄板にして鯛焼きを焼いて売ったりね、なんとか商売をして儲けようと必死だったな」

昭和29年(1954)独立。東口に借りた6坪の店でカバン販売を始めに、翌年ラーメン店を開業。当時、新宿では2軒しかなかった深夜営業店で、12席のカウンターはいつも満員。「ラーメン1杯30円。1日1,000杯売ったこともあったよ」と橋本さん。商売は順調に見えました。

しかし、人生いいことばかり続かないのが世の中の常。一念発起して新しいことを始めようと、昭和40年(1965)に転業したのがこのうどん店。「四国の讃岐うどんの食べ歩きをした帰りの新幹線の窓から、静岡、神奈川、山梨の三国にまたがる富士山を見て、店の名前を『三国一』にしようと思いついたんだ」
20年以上前に、新宿には若い女性も多いからと考案した看板メニュー。<br>和風サラダうどん
20年以上前に、新宿には若い女性も多いからと考案した看板メニュー。
和風サラダうどん
店内は民芸調で落ち着いた雰囲気。<br>三国一の山である富士山の画が飾られる。
店内は民芸調で落ち着いた雰囲気。
三国一の山である富士山の画が飾られる。

全国各地の郷土の味を盛り込んだ独自のメニューを展開

テイクアウトカウンターでは、<br>サラダうどんや温うどん、丼ものを販売。
テイクアウトカウンターでは、
サラダうどんや温うどん、丼ものを販売。
三国一の名に恥じない店にするために考え出したのは、こちらでしか味わえない個性豊かな創作うどん。全国各地の名物と組み合わせ、蝦夷名物「鮭とじうどん」、名古屋名物「みそカツうどん」、京名物「にしんうどん」などと、郷土の味をもちもちの手打ち麺とともに楽しめます。

また、その時代に求められている新しいメニューも常に考え、季節ごとにもオリジナルの味を提案。甲斐名物「ほうとう」、三河名物「みそ煮込みうどん」といった郷土の鍋物うどんメニューも揃え、ほかにはない味わいにも懐かしい味わいにも出会えると常連客を喜ばせています。

そして、夜はうどんだけでなく、各種お酒とそれらに合うつまみも提供。旬の食材をふんだんに使った料理でお酒を味わい、最後はうどんでしめるという楽しみ方ができます。さらに、テイクアウトメニューも用意され、オフィス街で働く人々が次々と買い求めていきます。
うどんは毎朝手打ちする自家製のもっちり太麺。<br>アイランドイッツ店の店長・本間辰男さんは絶妙の加減で茹で上げ、独自のコシを引き出す。
うどんは毎朝手打ちする自家製のもっちり太麺。
アイランドイッツ店の店長・本間辰男さんは絶妙の加減で茹で上げ、独自のコシを引き出す。

副都心のビルが林立するとともに芽生えた社会貢献の心

カウンターには旬の食材が並び、目に鮮やか。黄金に輝く「出し巻き玉子」も評判の一品。
カウンターには旬の食材が並び、目に鮮やか。黄金に輝く「出し巻き玉子」も評判の一品。
「西口には昭和40年(1965)まで淀橋浄水場の貯水池が広がっていて、その跡地にまず47階建ての京王プラザホテルが昭和46年(1971)に建設されたんだ。それまでは日が暮れると真っ暗闇の淋しい場所で、午後8時ころには追いはぎが出たこともある。そんな寂しいところに、今はこんなにたくさんのビルが並ぶとは思わなかったねぇ」

商売を始めたころは金儲けばかりに夢中になちがちだったと橋本さん。うどん店に転業したころから、道徳と経済が一つになってこそ発展の道が開けるという"道徳経済一体思想"を学び、「商売は儲けるだけでなく、人の役に立ち、社会に貢献できるものでなければ意味がない」と気がついたそうです。

「儲けるという漢字は、“信者”と書くよね。お客さんから信頼され、あの店がないと困ると言われるような店にしないと儲からないものなんだよ。お客さんを大切に、商売できることに感謝して、社会に恩返しできればと思っているんだ」。

西新宿で商売をして65年。「うどんだけでなく、人をつくる工場になれ」と言われたのをきっかけに、地方出身の学生や留学生を受け入れる寮を作り、600人以上の卒業生を社会に送り出してきました。三国一でふるさとの温かい味を楽しめるのは、橋本さんの親心が込められているからかもしれません。ぜひ味わいに訪れてみてはいかがでしょうか。
※取材時の情報です。変更となっている場合もございます、ご了承ください。