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神楽坂のツボ

神楽坂で歩けば足腰も鍛えられます。

神楽坂の“坂道”を歩く ~地蔵坂・光照寺編~

2011/07/25

地蔵坂、タヌキが出るか地蔵が出るか

なだらかな坂道が続く地蔵坂
なだらかな坂道が続く地蔵坂
 神楽坂下の交差点から神楽坂通りを上り、毘沙門天を通り過ぎてすぐ、左へ入る横道があります。そこから始まるのが『地蔵坂』です。
 最初は細めの通りに、居酒屋さんや八百屋さんなどが並んでいますが、3分ほど坂を上り続けると、広々としたなだらかな上り坂が目の前に拡がります。
坂道の途中にある解説柱。側面には坂道の簡単な説明も書かれています
坂道の途中にある解説柱。側面には坂道の簡単な説明も書かれています
 坂の途中にある地蔵坂の解説柱には、
『この坂の上に光照寺があり、そこに近江国(滋賀県)三井寺より移されたと伝えられる子安地蔵があった。
それにちなんで地蔵坂と呼ばれた。また、藁を売る店があったため、別名「藁坂」とも呼ばれた』
…との説明が。
 また、この地蔵坂、名前の由来は解説柱の一説以外にも
 
『光照寺の境内に住むタヌキが地蔵に化けて、夜な夜な坂を通る人を脅かしたというところから命名された』
 
…という説もあって、そんなに長い坂でもないのに、なかなか面白い坂道です。
 というわけで、ちょっとだけ親近感が沸いてきた坂道を上りつつ、そんな“タヌキ”が住んでいたという光照寺に向かいます。
神楽坂通りから左に入ってすぐの地蔵坂。道幅は少し狭い
神楽坂通りから左に入ってすぐの地蔵坂。道幅は少し狭い
地蔵坂だけにお地蔵様を発見!!
地蔵坂だけにお地蔵様を発見!!

目指すは坂の上の『光照寺』

坂道の途中、ふと頭上を見上げれば夏の空
坂道の途中、ふと頭上を見上げれば夏の空
 坂道を吹き渡る風を心地よく感じながら、坂を数分上ると左手に「光照寺」の入口がありました。
 この光照寺一帯は、戦国時代に後北条氏の家臣だった牛込氏のお城があった場所。とはいえ、1590年(天正18年)の北条氏滅亡後にお城は取り壊されてしまったため、その面影はまったく残っていません。もちろん、タヌキもいませんでした(残念)。
 境内に入ると正面に、鐘楼堂があり風情を感じます。この鐘楼堂は第一次大戦中に空襲を受けて旧本堂とともに焼失しましたが、平成に入り新築されました。梵鐘は、戦時中供出されていたために、戦災を免れたものだそう。
 この他にも、地蔵菩薩坐像(新宿区指定有形文化財・彫刻)、十一面観音坐像(新宿区登録有形文化財・彫刻)、阿弥陀三尊来迎図(新宿区指定有形文化財・絵画)、諸国旅人供養碑(新宿区登録有形文化財・歴史資料)など、室町時代から伝わる文化財も数多く収蔵されており、この付近一帯をはじめとした神楽坂の長い歴史を感じることができます。
光照寺本堂
光照寺本堂
鐘楼堂
鐘楼堂
光照寺入り口にある立派な石碑
光照寺入り口にある立派な石碑
光照寺付近に牛込城があったことを記す看板
光照寺付近に牛込城があったことを記す看板

坂の上には他にもこんな見どころが…

日本出版文化クラブ会館敷地内に立つイチョウの大木
日本出版文化クラブ会館敷地内に立つイチョウの大木
 光照寺を過ぎ、少し坂を上ると右手に日本出版文化クラブ会館があります。道沿いにある大きなイチョウの木が目印です。

 この木は、新宿区の保護樹木で樹齢250年以上だといわれています。戦時中、焼け野原となった神楽坂の街に、このイチョウが焼け残り、被災した人々は、この木を目印にして、この場所に戻ってきたそうです。
 幹には被災した際の傷(裂け目)が残っており、そこからケヤキなどが生えてきたというこの大木は、その強い強い生命力で周囲の人々をどれほど勇気づけてきたことでしょう。今も元気に神楽坂を高台から見守り続け、この土地の歴史を静かに後世に伝えています。
 
 紅葉の季節はまた一段と美しい姿が見られるはず。今からとても楽しみですね。
イチョウの木の下に立つ『新暦調御用所(天文屋敷)跡』の看板。しばし足を止めて読むと、この場所の歴史がよくわかります
イチョウの木の下に立つ『新暦調御用所(天文屋敷)跡』の看板。しばし足を止めて読むと、この場所の歴史がよくわかります
 イチョウの木の下には、『新暦調御用所(天文屋敷)跡』の立て看板があり、この付近一帯の歴史の変遷がまとめられています。

 牛込城から光照寺はもちろん、幕府によって火除地として召し上げられたり、幕府が初めて『新暦調御用所(天文屋敷)』を設けたり、御本丸奥医師の屋敷や高級料亭が開業し華やかな一時代を築いたり…と、様々な歴史を経てきたこの土地の歴史がよくわかります。

キクチ エリコ(しんじゅくノート区民スタッフ)