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神楽坂のツボ

花街と文学の香りをたどる(前編)

兵庫横丁界隈を歩く

2011/01/07

味わいのある石畳からスタート。
味わいのある石畳からスタート。
神楽坂を代表する石畳といえば、兵庫横丁。今なお花柳界の面影を残し、テレビや雑誌などでも度々登場する人気スポットです。今日はそんな石畳をそぞろ歩き、日本情緒を噛み締めてみようと思います。
スタート地点は神楽坂通りを挟んで毘沙門天善国寺の正面。うどん会席の「神楽坂 鳥茶屋 本店」を右手に左の石畳を進みます。するとさっそく右手に名物居酒屋の「伊勢藤」さんが。寒椿の赤がしっとりとした風情を醸しています。しもたや風の家屋は、縄のれんがなければ居酒屋とはわからない落ち着いた佇まい。
振り返ると、毘沙門天の朱塗りの門が見えます。
振り返ると、毘沙門天の朱塗りの門が見えます。
しっとりとした佇まいの伊勢藤。
しっとりとした佇まいの伊勢藤。
角を曲がると、道が3つに分かれました。
角を曲がると、道が3つに分かれました。
突き当たりには東京理科大学の森戸記念館。道なりに左に折れると、それまでよりずっと細い石畳の道が、3本に分かれて続いていました。地図を片手に散策中の若い女性2人もここで立ち止まり、「わあ、迷路みたいだね」「どっちへ行こうか」と相談しています。迷うのも神楽坂歩きの醍醐味♪
正面の路地入り口には「すぐそこ、和風かふぇ」の標識が。
正面の路地入り口には「すぐそこ、和風かふぇ」の標識が。
左手の路地は人がすれ違えないほどの道幅。猫になった気分です。<br>
左手の路地は人がすれ違えないほどの道幅。猫になった気分です。
どれも面白そうですが、ここを右手に折れた小道が目指す兵庫横丁。石畳の石一つひとつに表情があって、たどって歩くのが楽しくなります。なんでも、兵庫横丁は神楽坂で最も古い道なんだとか。武蔵の国の府中から千葉の国府台までを結んでいた鎌倉古道の一部だそうです。兵庫というのは兵(つわもの)、庫(くら)のことで、武器商人の町であったことからその名が付いたといわれています。今でこそ若い女性が歓声をあげながら闊歩するこの神楽坂名所も、往時はかなりものものしい通りだったんですね。
石の一つひとつに表情がある石畳。
石の一つひとつに表情がある石畳。
表通りの喧噪が嘘のように静かな兵庫横丁。
表通りの喧噪が嘘のように静かな兵庫横丁。
時折、観光客が通り過ぎる他はひっそりと静かな兵庫横丁。料亭が並ぶ通りには、今にも芸者衆がやってきそうな気がします。そして、神楽坂通りから最も奥まったところにあるのが、「ホン書き旅館」として知られる「和可菜」。野坂昭如、伊集院静、深作欣二、市川森一など名だたる作家や映画監督、脚本家が執筆のために投宿してきました。山田洋次監督「男はつらいよシリーズ」の脚本のほとんどは、ここで書かれたそうです。なるほど、車両が通らないこの場所なら、執筆に打ち込めるかも。女将は女優、小暮美千代さんの妹さん。表札にはしっかり、「小暮」の文字が。
「ホン書き旅館」として有名な和可菜。
「ホン書き旅館」として有名な和可菜。
和可菜の向かいにある料亭、幸本。
和可菜の向かいにある料亭、幸本。
撮影スポットとしても人気のこの通り。この日も学生サークルのロケハンらしい2人が、和可菜の黒塀あたりを撮影していました。その前を通り過ぎると、兵庫横丁は終わり。アスファルトの通りに出ると、花柳界の名残は泡沫と消え、現実に引き戻されます。まだまだ彷徨い足りず、路地を求めて周辺を探索することに。