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神楽坂のツボ

ほっこりごはん~その1~

料亭 神楽坂一邑編

2013/03/18

神楽坂を一歩はなれた静かな空間

 たくさんの人で賑わう神楽坂。その通りを一歩外れて、筑土八幡神社を目指すと見えてくる「神楽坂 一邑(いちむら)」。
 高級料亭の佇まいに、店先に飾られている草堂の着物と陶芸品。神楽坂の情緒が感じられる外観です。
 お店の中に入ると、心地よい風が通りぬけ、温かみのある空間が広がります。
白で統一された店内
白で統一された店内
風とともに感じる木の香り
風とともに感じる木の香り

料亭でゆったりランチを

目を惹く味わいのあるメニュー
目を惹く味わいのあるメニュー
 ここ「神楽坂 一邑」では、旬のお魚を使った、素材の味を生かしたランチが楽しめます。今日のメニューは、ぎんむつの照焼、さばの醤油麹焼、鯛茶漬、あら煮の4種。
 親方のその日の仕入れや季節のお魚によって、日替わりでメニューが決まります。どれも親方自慢の、すべて手づくりにこだわったメニューです。
どれも食べたくて迷いますね
どれも食べたくて迷いますね
 迷いに迷い、大将おすすめのぎんむつの照焼をチョイス。
 ぎんむつの照焼とともに運ばれてきたのは、自家製卵焼きと鴨つくねの煮物、アスパラ・ブロッコリー・芝えびのマヨネーズ和え、昆布・きゅうり・なすのぬか漬け、お味噌汁、ごはん、そしてデザートのすいか。1000円とは思えない豪華さです。
 料理を運んできてくれるのは、笑顔の素敵な気さくな女将さん。
 ぎんむつの照焼の甘辛いたれが食欲をそそり、 ごはんが進みます。学生にうれしいことに、ごはんはおひつから自由によそうことができるのです。
親方の笑みに心もほっこり
親方の笑みに心もほっこり
 「おひつを抱えて食べられちゃっても困るけどね」。と笑いながら話す親方。優しい笑顔の親方とお話ししていると、自然と心がほっとしてきます。
 夜の料亭の雰囲気を十分に味わえる、優しくて上品な味。 「今の時代、1000円でも高いかもしれないねえ。それでもこだわっているから、ちょっとやりすぎなくらいなんだけどね」。
 おいしい料理を楽しんでほしい。親方の想いが伝わります。
 一邑がランチを始めたのは、15年前の創業当初のこと。当時はランチを出すお店も少なく、お客さんが100人来ることもざらだったそうです。 8年前に一時ランチを終了しましたが、4年前から復活させました。
 「夜に良いものを提供するためにも、お昼やるんだよ。せっかく高級な材料を使っても、残ったらもったいないでしょう。良いものを使って、昼にも回す。もちろん昼用に仕込むものもあるけれど、全部食べられるものだからね」。
 食材へのこだわりと愛情がこのお店の味を生むに違いありません。

一邑こだわりの味

店先に飾られている<br>ダバダ火振りのうんすけ(陶器瓶)
店先に飾られている
ダバダ火振りのうんすけ(陶器瓶)
 一邑を訪れたらぜひ味わってほしいのが、「ダバダ火振り」と「生ぬか」です。
 栗を50%使用した、四国の四万十川で生まれた栗焼酎「ダバダ火振り」。方言で寄合場を意味する「ダバダ」と、四万十川の火の縄で囲んで追い込む「火振漁」にちなんだ 「火振り」から名がつけられたこの焼酎は、四万十で愛されているふるさとの味です。
 焼酎に馴染みの薄い私たち学生でも、かすかな甘さと栗の素朴な香りが感じられ、とてもまろやかな味が楽しめます。上品な店内で栗焼酎を嗜む。大人の楽しみのようで少し誇らしい気持ちになるはずです。

 そしてもう一つ、一邑のこだわりが感じられる「生ぬか」。
 その日使う分のお米だけお店で精米している一邑では、毎日「生ぬか」がでます。そのぬかでぬか床をつくり、お客さんに美味しいぬか漬けを提供しているのです。
 毎日新鮮なぬかでつくられるぬか漬けは、くせがなくごはんと相性抜群です。

人と人との温かさにふれる

 取材の中で、とくに印象的なことばがありました。
 「やっぱりお客さんが『おいしかった。ありがとう』って言ってくれればね、そりゃ一番うれしいよ。でも、常連さんがごくたまに『こりゃいただけないねえ』なんて小言を言ってくれたりする。そんな、馴染みのお客さんだからこその、遊びのやりとりも良いよね」
 神楽坂には美味しい店がたくさんあります。しかし、歴史ある神楽坂の中で、街の人との気の置けない会話を楽しめるお店を見つけることこそが、神楽坂のランチを楽しむ醍醐味なのではないでしょうか。

 お店を見渡すとあちこちに見える絵画や陶芸品。どれも親方やお客さんの作品です。親方が陶芸教室でつくった箸立てや、近くのギャラリーのオーナーさんが描いた一邑の絵。これらがまた、一邑の暖かい空気を創っているひとつなのでしょう。
常連さんの作品<br>お店への愛情が伝わります
常連さんの作品
お店への愛情が伝わります
伝統工芸士 上田彩煌氏の作品<br>吟醸酒「干支壺」
伝統工芸士 上田彩煌氏の作品
吟醸酒「干支壺」
 神楽坂の情緒と人情が感じられる、ほっとできるお店。
 「毎日のことだとちょっと大変だけれど、たまにする贅沢にね。お値段よりも良いもの出しますよ」。
 大将の人柄と美味しいお料理。お腹も心も満たされて、笑顔でお店を出ました。
 ジャンクフードやお手頃な居酒屋に行くことの多い毎日の中で、たまには温かみのあるごはんをたっぷり食べて、ひと息ついてみませんか。
しんじゅくノート学生記者 紀田きよみ
神楽坂 一邑 -いちむら-
 住所:東京都新宿区津久戸町3-19
 電話番号:03-3266-7778
 営業時間:18:00~22:30
 定休日:土・日曜、祝日