地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、新宿区地域ポータル「しんじゅくノート」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

新宿区地域ポータル「しんじゅくノート」

神楽坂の達人

COPAIN/勝村忠之さん

2011/01/04

神楽坂でお店を営んでいる方や在住者のお話を伺いながら、神楽坂の魅力をお伝えする「神楽坂の達人」。
第10回目は早稲田通りに面した洋菓子と珈琲の店「COPAIN(コパン)」の2代目、勝村忠之さんにお話を伺いました。

神楽坂のコミュニティ・カフェへ

お店を開いてどのくらいになりますか?

「いつも気持ちよくいらしていただくために笑顔でお待ちしております」と勝村さん
「いつも気持ちよくいらしていただくために笑顔でお待ちしております」と勝村さん
30年前に、父(勝村忠三さん)が始めました。実は、戦後から祖父がここで甘味処を営んでいたんですが、引退してビルに建て替えたため、その1階で父がお店を開くことにしたんです。父は当時、別の喫茶店を経営していましたが、そこからパティシエを連れてきて、ケーキがメインの店を立ち上げて今に至っています。

入り口のガラスに描かれた絵がかわいいですね。

もっと入りやすい雰囲気にしたいと、昨年の冬に立て看板や旗を含めて通りに面した外観部分を改装したばかりです。お客さんからも好評で、私も気に入っています。入り口からだと店内のスペースが分かりづらいので、表を明るくして、中の奥行きをもっと見せるようにしました。

COPAINって、とてもいい響きですが、どういう意味があるんですか?

ひさしの上の看板はこちら
ひさしの上の看板はこちら
フランス語で「集まる」「仲間」といった意味です。お客さんに大勢いらしていただけるように、という願いを込めて父がつけました。うちは常連さんが多いんですが、マニュアルをがちがちにしていないので、お客さんと親しく会話ができるんですよ。それで毎日来て下さる方もいらっしゃいますし、一人で来ても誰かとおしゃべりしたり、他のお客さんと友達になれます。名前の通り、ここへ来て誰かと仲良くなれる――そんな、町のコミュニティを目指しています。

今日も常連らしき方たちが大勢、いらしてますね。

オープン当時から通って下さっている方もいます。お客さんには近所の方や近くの会社の方が多いので、堅苦しくなく、暖かい雰囲気を出したいと思っています。商品の味や品質も大切ですが、個人個人を相手にする接客をしていきたいですね。

COPAINさんと言えば、シュークリームが大人気ですが、どんな特長があるんですか?

カスタードクリームと生クリームが2層になっています。自家製の生クリームは甘さを控えめにし、カスタードクリームにもそれをふんだんに足しているので、とてもあっさりして食べやすく、どの世代からも好評をいただいています。今はいろいろと洒落たシュークリームもありますが、当店のものはほっとする味だと思います。オープン当初から出していましたが、やはり、ずっと人気があったのはこのシュークリームなんです。それで、私が店を継いだ時も、これは絶対に残そうと。COPAINの看板商品として思い入れがありますね。

1日100個以上、土日は200個近く売れる自慢のシュークリーム
1日100個以上、土日は200個近く売れる自慢のシュークリーム

他にはどんなメニューがありますか?

ケーキの他、パスタやサンドイッチもあります。毎月限定メニューで、オムライスやカレーライスなどのご飯ものも出しています。みなさんが気兼ねなく入れるような、食べやすくて庶民的、ボリュームのあるメニューを目指しています。
ホットドックやベーグルも。コーヒーはドトールコーヒーと提携し、200円~とリーズナブル
ホットドックやベーグルも。コーヒーはドトールコーヒーと提携し、200円~とリーズナブル
こちらも手作りのイチゴのショートケーキ
こちらも手作りのイチゴのショートケーキ

祖父と父の歴史を受け継ぐ

勝村さんがこのお店を継いだのはいつですか?

7年前です。開業時に父が連れてきたパティシエが独立することになり、お店をどうしようかということになりました。私はそれまでゼネコンの会社に勤めていて、大学卒業後、ずっと東京を離れていました。当時は札幌にいたんですが、父から戻ってきてくれないか、と言われ、会社に残るか、親を大切にすべきか、後悔するのはどちらなのかいろいろと悩みました。それで最初は返事を濁していたんですが、ある日、東京にいるはずの父から突然電話がかかってきて、「今、現場の前にいるから」と。それで、決心しました。

全く違う職業からの転身で戸惑いもあったのでは?

店内に入ってすぐカウンターがあります
店内に入ってすぐカウンターがあります
今、お店にあるケーキのうち、4~5種類を私が作っているんですが、最初はケーキを作る気はありませんでした。でも、独立したパティシエさんにはこのケーキだけは残してほしい、という気持ちがあったんですね。それで、残すべきものは残そうと、それらのケーキのレシピを短い期間ですべて覚えなければならなかった。そうこうするうちにクリスマスも近付いてきて、一人で何台もクリスマスケーキを焼くことになり、その時はすごいプレッシャーでした。それでも、寝ずにがんばって、人間、できると思えばなんとかなるんだと実感しましたね。建築現場でも突貫工事で終わらせますから(笑)。

建築の仕事と似ていますか! どういうお店づくりを目指しましたか?

こういう店にしたい、という気持ちはなかったです。まったく畑が違うので、考える余裕がありませんでした。自分が変えてやろうというより、父が今まで守ってきたものを継続してずっと残していこうという考えでした。この気持ちは今でも変わりません。父の代からだけでなく、戦後からずっと祖父がここで店をやってきましたので、私もがんばっていきたいですね。

勝村さんのような若手がいらっしゃると、神楽坂がますます活気づきますね。

奥行きがある店内は全40席
奥行きがある店内は全40席
一人でもホッと寛げる空間
一人でもホッと寛げる空間

町の空気を一緒に感じられる場所

神楽坂に戻ってきてよかったと思うことは?

新宿区ですが、他の町とは違った趣があって、東京の中でもすごくいい空気があるなと思うんです。神楽坂は昔からの人も住んでいるし、古いものと新しいものが融合している町。優しい人が多く、お店を開いていてもこちらに跳ね返ってくる環境があります。例えば、駅ビルの大きな店舗は集客はあるでしょうが、人との触れ合いは少ない。ところが、この店の場合、神楽坂の人たちを相手にしていますので、この町の空気を一緒に感じられる良さがあります。他の町ではこういうお店はできないと思いますよ。

昔と変わったなと感じることは?

以前は商店街も老舗ばかりでした。昔ながらの佃煮屋さんがあったり、映画館があったり。それがみなさん引退されてビルになったり、チェーン店になったり。また、マンションがすごく増えたので、新しい住民の方が増えました。ここ最近、町の見た目も住んできる人も大きく様変わりしています。

暮らしている方にとってはどんな町ですか?

店頭のシュークリームが目印
店頭のシュークリームが目印
すごく住みやすい町です。治安もいいし、住んでいる人が優しい。通りで出会えば、気軽に挨拶してくれますし。スーパーや銭湯、小さな料理屋さんや飲み屋さんもあり、遊びも買い物も全部ここで済んでしまいます。私自身はこの5月に結婚して隣の早稲田に引っ越したんですが、一度暮らすと神楽坂を出なくなってしまうと思いますよ。

お勧めの過ごし方はありますか?

神楽坂は一言で言えば、“古き良き東京”。散策すると、路地があったり、古い料亭があったり、昔ながらの町並みが残っている、そこが魅力です。特に裏通りには小さなお店や公園など、こんなところにこんなものがあるんだ、という発見があります。神楽坂は裏がすごく面白いんです。飯田橋や九段下にも近いので、昔はよく九段下の北の丸公園まで散歩しました。

よく行かれるお店があったら教えて下さい。

毘沙門天の裏のジャズバー「もりのいえ」によく行きます。ジャズの生演奏が聴けて、雰囲気がいいですよ。ホッと一息つけます。

素敵ですね! 今日はありがとうございました。

レジの前には2005年に受賞した「新宿区こだわり大賞」の認定書が
レジの前には2005年に受賞した「新宿区こだわり大賞」の認定書が
ケーキは常時10種類以上
ケーキは常時10種類以上

取材を終えて

東京メトロ東西線「神楽坂」駅の神楽坂口を出て早稲田通りを下りて徒歩1分
東京メトロ東西線「神楽坂」駅の神楽坂口を出て早稲田通りを下りて徒歩1分
お客さんが次々と来店する様子や、勝村さんをはじめ、お客さんとごく自然に会話を交わすスタッフのみなさんを拝見して、COPAINさんが神楽坂で長年愛され親しまれてきたお店なんだなあと実感しました。
丁寧に作られたシュークリームのおいしさもさることながら、この暖かい雰囲気を味わいたくて何度も通いたくなる、そんなアットホームなお店です。散策の折にはぜひまた伺いたいです。

しんじゅくノート内COPAIN(コパン)の紹介ページ