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神楽坂の達人

はりいんT/滝沢照明さん

2010/06/18

神楽坂でお店を営んでいる方や神楽坂の在住者のお話を伺いながら、神楽坂の魅力をお伝えする「神楽坂の達人」。

第7回目は東西線神楽坂駅から徒歩2分、前回ご紹介した神楽坂ペットクリニックの向かいにある、はりいんTの滝沢照明さんのインタビューをお届けいたします。

はりいんTのこと、滝沢さんご自身のことについて伺いました

はりいんTは何年から開業されたのですか?

はりいんTの入口。
はりいんTの入口。
1984年(26年前)に神楽坂のこの場所で開業しました。はりいんTの前はそれよりもさらに10年遡って1974年になりますが、新宿区白銀町で「日の出はり灸院」という屋号で開業していました。

長い間、鍼灸に携わっているのですね。

はい。今でも、屋号をおぼえていてくださる患者さんがいます。

先生が鍼灸師になったきっかけを教えていただけますか?

母がマッサージ師の免許を持っていたことと、「手に職を持ちなさい」と言われたことがきっかけです。昼間は大学に、夜間専門学校に通って2年で按摩、マッサージ、指圧師の資格を取得しました。その後、卒業製作のため夜間を休学し、大学卒業後は専門学校に復学しました。それから1年間通学して鍼師・灸師の資格を取得しました。

鍼灸は学ぶことが多く、研究も面白かったのでこの道に進んでよかったと思っています。鍼灸業を始めたのは私が初代ですが、妹2人も鍼師・灸師の免許を取得し、家族で患者さんを診ていました。

研究ってどんなことをするのですか?

滝沢先生は腰痛治療について書いている。
滝沢先生は腰痛治療について書いている。
経穴(けいけつ)や患者さんの症例を研究していました。今でこそ、そのような研究や検討会は一般的になってきましたが、当時はまだそのような研究をするというのは稀だったと思います。

「経絡経穴の国際的な統一」を目的として、古典書59種から経穴(けいけつ=つぼ)部位の文献抜粋の協力をしました。日本経穴委員会が主体となり1987年に集大成として「経穴集成」が1万円で刊行されました。症例検討会は約20年以上前から継続して現在に至っています。鍼灸臨床のなかから症例報告(医師が読んでも分かる西洋医学的用語でまとめたもの)を、参加者の前で質疑応答する方式です。学会での症例報告も行いました。業界誌などにも掲載されています。

先生たちは先駆者ということですね。

そうなるのかもしれません。そういえば鍼院を開業してから36年間、診療時間を変えていないのですが、それは研究や検討会の時間に併せて当時決めた時間を今もそのまま継続しているからなんです。今日(木曜日)も実はこれから症例検討会に参加するんです。

なるほど。ところでなぜ白銀町から神楽坂に移ったのですか?

白銀町には2階建ての自宅兼診療所が持ち家としてありましたが、手狭になってきましたので移転を考えたのがきっかけです。母の師にあたる人が神楽坂にお店を持っていたということもあって、神楽坂商店街に近いところで自宅兼診療所を開設したいと思うようになりました。そこで、神楽坂6丁目に住んでいる美大2年後輩の平岡氏に設計をお願いして、新築移転をして現在に至っています。
はりいんTの待合室。この写真は先生自ら撮影してくださったもの。
はりいんTの施術室。通う方のことを第一に考えた落ち着いた雰囲気が特徴です。

先生のところにいらっしゃる患者さんで最も多い相談は何でしょうか。

腰痛、くび・肩のこり、それと加齢にともなってあらわれる関節の痛み、例えば膝関節痛や五十肩、最近は坐骨神経痛などが多いです。それぞれ鍼灸がよく効きます。

自分で出来る簡単なケア方法でアドバイスすることはありますか?

肩こり、首こりに関しては、姿勢をよくすることを奨めています。例として言いますと、ボーリングで投げる前に玉を持ち上げて構えるじゃないですか。あのときに、腕がまっすぐ伸びていれば辛くないですが、腕の角度が曲がっていると手首が痛くて支えられませんよね。

つまりパソコンなどをやるときに、画面を凝視するがゆえに姿勢が前かがみになったり、首が過度に緊張すると当然頭を支える首や肩には負荷がかかります。ですので、姿勢をよくするように意識することと、あとはパソコンであれば適度な休憩を挟むことは必要だと思います。

ちなみに先生はご自身に鍼灸をすることはありますか?

日常、よくします。予防医学であり未病を治すのが鍼灸です。風邪をひきそうなとき、お腹が冷えたとき、目が疲れたときなど独特のツボにします。このあいだも屋上菜園に梯子で昇り降りを頻繁にしたとき、肘を痛めたのですぐに鍼灸をしました。痛みはすぐに治りました。なんでもそうですが悪化する前に素早く治療することです。

先生が開業してから大切にしていることを教えてください。

はりいんTで使用されているオリジナルの竹筒製棒温灸。
はりいんTで使用されているオリジナルの竹筒製棒温灸。
最も大切にしていることは患者さんの症状を見て、それが病院で診てもらうべきものであるかを判断し、必要であればすぐに病院を紹介してあげることです。あとは、当院の特徴でもある「痛くない鍼」「熱くない温灸」にもあるとおり、患者さんが気持ちのいい施術を受けられることと、患者さん一人一人の症状に併せた方法で施術することです。

神楽坂について伺いました

神楽坂に住んでいて昔と今とで変わったと思うことはありますか?

老舗が少なくなって路地路地に新しいお店が増えたことと、5~6年前からテレビや雑誌で神楽坂が紹介されだして通りに人が多くなってきたことです。2007年に「拝啓、父上様」が放映されてからは人通りが多くなり路地裏まで人が歩くようになりました。平日もそうですが土日はとくに見物客が多いですね。

神楽坂の魅力は何だと思いますか?

私の職業柄か、商店街の人達や昔から住んでいる人、新しく入ってきた人とのコミュニケーションがとれる街が神楽坂の魅力のように感じています。
屋上に作られた菜園。

先生の趣味は何ですか?

今年になって屋上菜園でミニトマトや大葉、オクラやナス、胡瓜などの野菜を育てています。写真やサイクリングも趣味のひとつです。最近は折り畳み自転車(BROMPTON)を横須賀線に積んで北鎌倉で組み立て、鎌倉をめぐり四季おりおりの寺社仏閣をめぐって花の写真を撮影しています。鎌倉は小・中学校を卒業している場所なので私にとっては故郷みたいなものです。

いい気分転換になりそうですね。普段、先生が利用するお店や神楽坂に来る人たちにおすすめのお店があれば教えてください。

はりいんTのこの建物を設計した方がやっている喫茶店、トンボロにはよく行きます。雰囲気もいいですし、コーヒーが美味しいのでおすすめですよ。

最後に先生ご自身の今後の目標や抱負をお聞かせください。

今の若い人たちの多くは、首や肩こりが原因で、自律神経失調症のさまざまな症状で苦しんでいます。鍼灸治療により改善が期待できるので、そのことを普及させていきたいです。体を温める治療で免疫力や内臓機能を高め、自律神経やホルモンのバランスを整え、予防医学としての鍼灸治療を目指したいです。それと娘に鍼灸の職人的技術を継承してもらうことが目標です。

取材を終えて

取材を受けてくださった滝沢照明先生。
取材を受けてくださった滝沢照明先生。
36年間、この道一筋というのにも頭が下がりましたが、今なお研究熱心であること、そして鍼院での患者さんとの出会いを心から楽しんでいることに感銘を受けた1時間でした。

つい最近、娘さんが美容針を始めたり、8月にはお孫さんも誕生するなどプライベートでも充実した時間を過ごしているという滝沢先生。これからも先駆者として患者さんを支えてほしいと思います。今回はありがとうございました。

はりいんTの紹介ページ