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神楽坂の達人

神楽坂とよ田/橋本功さん

2010/04/19

神楽坂とよ田の橋本功さんに伺いました

神楽坂とよ田の店舗の前で撮影した1枚。日本料理店らしい落ち着いた佇まいが特長です。
神楽坂とよ田の店舗の前で撮影した1枚。日本料理店らしい落ち着いた佇まいが特長です。
神楽坂でお店を営んでいる方や神楽坂の在住者の目を通して、神楽坂の魅力をお伝えする「神楽坂の達人」。

第4回目は神楽坂通りからひとつ入った路地に面した日本料理店、神楽坂とよ田橋本功(はしもといさお)さんのインタビューをお届けいたします。

今年で創業28年目を迎えて

創業したのはいつ頃でしょうか?

神楽坂とよ田の橋本さん。
神楽坂とよ田の橋本さん。
昭和57年(年)の3月23日です。今年で丸28年になります。

最初は15坪ぐらいで始めたお店でしたが、8年後の平成2年9月には改装をおこないまして、坪数だけで言いますと約4倍に広がりました。但し、私共がお客様にご満足いただけるサービスを提供することを考慮しまして、お客様の座席数はほとんど変えていません。

改装して20年以上経っているとは思えない程、綺麗でデザインもまったく古さを感じないですね。

綺麗でしょう?当然、メンテナンスといいますか維持をするための手入れには気を遣っていますからね。

お店の内装に関しては何かこだわりはありますか?

神楽坂とよ田は3~4人の接待でご利用いただくお客様が多いので、どの席も3~4人ぐらいの人数を想定して作りました。お座敷席は10名前後のお客様にもご利用いただけます。あとは、お客様の目線が他のお客様の目線と会わないような作りになっているのも特長ですね。
テーブル席。ベンチシートのテーブルもあります。
テーブル席。ベンチシートのテーブルもあります。
完全個室もあるが、そうでないテーブルも写真のように和風のシェードカーテンで仕切られているため、プライベートを確保できる作りに。
完全個室もあるが、そうでないテーブルも写真のように和風のシェードカーテンで仕切られているため、プライベートを確保できる作りに。
客席を案内する橋本さん。常にお客様のことを考えた作りになっています。
客席を案内する橋本さん。常にお客様のことを考えた作りになっています。
10名前後のお客様のためのお座敷席もあります。
10名前後のお客様のためのお座敷席もあります。

個室もあり、ベンチスタイルの席があり、個室ではないところでも仕切りがあるのはそういった理由からなんですね。ところで、お店の名前の由来は何でしょうか?橋本さんのお名前とは異なるので気になったのですが。

「とよだ」は元々の苗字・屋号なんです。なぜ名前が橋本かというと、ちょうど二代目のときに無縁仏になっていた橋本さんという方を弔いまして。当時の戦時立法によってその代からは橋本姓を名乗るようになったんです。

なるほど。そういう理由があったのですね。お店のルーツはどこから始まったのですか?

東京では屋台の鮨屋から始まったと聞いています。実家は日本橋にあるのですが、当時はとよだというお店と同時に天狗鮨という名前で父の代までは鮨もやっていました。屋台の鮨屋の頃は、西郷隆盛が「赤べろべろしょっぱ漬けをくれ」とまぐろを目当てによく来ていたと口伝いに聞いています。日本橋のとよだの方はそういう訳で創業130年ぐらいになりますね。

神楽坂とよ田のこれまでとこれから

お店を営むにあたって大切にしていることはありますか?

お客様からいただくお勘定に見合ったものをお出しするのは当たり前。お客様の気持ちを見て、お料理は新鮮なもの、温かいものは温かいうちに、冷たいものは冷たいうちにお出しできるように気をつけています。

60坪ありますが、どのお客様のお席にも同じ時間でお料理を提供できるように調理場の位置を考えて作られているんです。それと同時にお上がどんな忙しいときでも、すべての席に顔を出しまして、お客様のお考えなり、気持ちを出来るだけ汲むようにしています。

お店ののおすすめのメニューはありますか?

日本料理全般をやっていましてコースの場合は毎週献立を変えていますので、そういう意味では特におすすめというのはないですね。神楽坂とよ田では旬の野菜と、特に魚はその日1日分しか仕入れませんので1年中、毎日築地に仕入れに行っています。
カウンター席とその奥にある厨房。厨房が見えることにも神楽坂とよ田のこだわりが感じられます。
カウンター席とその奥にある厨房。厨房が見えることにも神楽坂とよ田のこだわりが感じられます。
カウンター席からも見える厨房の棚の模様ひとつとっても、どこか粋で洒落たそれでいて決して主張しすぎない落ち着きがあります。
カウンター席からも見える厨房の棚の模様ひとつとっても、どこか粋で洒落たそれでいて決して主張しすぎない落ち着きがあります。

毎日というのは凄いですね。長い間、お店を続けてきて苦労されたことはありますか?

お店を始めた頃は、お客様の方が年上で色々と教わることが多かったのですが、長い間やっていると、今度は私共の方がお客様より年上になっているんですよね。そうすると、若い人の気持ちや求めるものにどう対応していけばいいかというのがあるんです。本筋の日本料理は絶対に残していきたいと思っていますので、それが例え古いといわれてもその姿勢を守りながらお客様の求めるものに応えていきたいと思っています。

お店を続けてきてよかったことはありますか?

私と女将で違うのですが、私は28年間に育った若い衆が還暦のときに駆けつけてお祝いをしてくれたときが非常に嬉しく思いましたね。女将の場合は、色々なお客様と接する中で、人間としても磨かれたということですね。二人とも感じるのはいい従業員に恵まれて、支えられてやってこれたことですね。

これから目指すもの、目標とすることは何ですか?

世間一般的に不況と叫ばれていますが、神楽坂とよ田も昨年は特に厳しい年でした。まだまだ、踏ん張りどころが続きますが、値段を下げてみようとか、お昼も営業してみようとかは考えていません。先程の、温かいものは温かいうちにの話ではないですが、当たり前のことを続けていく、私共が出来ることをやっていくというだけですね。

神楽坂について

神楽坂に住んでいて昔と今とで変わったと思うことはありますか?

神楽坂坂上から東西線神楽坂口方面を望んだところ。平日でも賑わいがある。
神楽坂坂上から東西線神楽坂口方面を望んだところ。平日でも賑わいがある。
近年の神楽坂ブームで、店舗の入れ替わりが激しくなっていますね。ここでお店を始めた頃にお店を営んでいた方々は、ほとんどの方がお店を閉めて、ビルを貸しているという状態になっていますので、テナントさんが増えたというのもありますね。

神楽坂の魅力は何だと思いますか?

私が今、感じるのは通りが一本道を中心にして横道に入っていけるコンパクトな町、歩いていてもほっとできる町という部分ですね。新宿とか池袋を歩いていても、雑然としていますが、ここはキョロキョロしながら歩ける町だと思います。神楽坂の場合、珍しいのが裏通りに行くとほとんどが住宅ですよね。だから外来者も多いけど、地元の住民も多いという点。歩いている人を見ると、外来者の方だけではなく、地元の人も多い町って都心ではほとんどないですよね。

いつ頃から人通りが多くなりましたか?

ここ3年ぐらい前から激しくなったように思います。

座右の銘はありますか?

何事にも真摯に取り組むことですね。極端なことをいいますと、誉められたことなんてどうでもいいんです。むしろ、苦情をいただいたときこそ、流さないで真摯に受け止めてきちんと対応しないと駄目ですね。

普段、この周辺でお食事などで利用するお店はありますか?

コパンの自家製シュークリームは生クリームとカスタードクリームがふんだんに遣われている逸品。
コパンの自家製シュークリームは生クリームとカスタードクリームがふんだんに遣われている逸品。
仕事柄、普段は夜どこかで食事というのが難しいのですが、自家製のシュークリームが有名なコパンさんとか、ジャンボシューマイの宝龍さんとか、焼肉の三好弥さんは利用しています。

最後に神楽坂へ遊びにくる人に、おすすめの過ごし方をご紹介ください。

神楽坂は昔からの面影が残っているところですので、表通りだけではなく、裏通りも散策してみると楽しいと思います。

取材前は個人的に敷居の高いお店という印象を持っていました。今回、橋本さんのお話を伺ってその印象が誤りであったことを認識しました。橋本さん(神楽坂とよ田)のこだわりの核には常にお客様があります。お店の満足よりもお客様の満足を第一に据えたサービスが、大切な時間に長年利用され続けている理由なのではないでしょうか。今回は貴重なお時間をありがとうございました。
神楽坂とよ田の紹介ページ