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神楽坂の達人

otohaci/上村崇司さん

オーダーメイドもOK! 革製品の専門店。

2013/04/30

神楽坂のメインストリートから少し外れた静かな場所。
ガラス越しに見える重厚感のある革製品に引き寄せられた。
オーダーメイドの革製品を作っている『otohaci』。
そーっと、木戸を開いてみると、オーナーの上村さんが笑顔で迎えてくれた。
オーナーの上村崇司さん<br>
オーナーの上村崇司さん

はじめの職業は料理人?

上村さんが作った革小物
上村さんが作った革小物
―新潟のご出身だそうですが、いつ上京されたんですか
高校卒業してですね。こっちで働き始めました。

—その時は何のお仕事をされていたんでしょうか
その時はね、イタリアンレストランで働いていました。

―今と全然違う職業だったんですね!飲食店で働こうと思ったのはどうしてですか
自分で独立したかったんですよね。それで最初に飲食をしたかったのかな。いろいろやりながらどういう職種がいいのか探してたのかもしれませんね。

―なぜ独立しようと思ったんですか
あんまりその、人と一緒に働くのが得意じゃなかったのかもしれないですね。
自分で仕事ができればなあと。

―もともと何か作るのはお好きだったんですか
ものづくりは小さい頃からすきでしたね。
でも美大に行こうとは思わなかった。僕は学校がきらいだったからね(笑)

気になったことはやってみる

作業台。ここから色々なものが生まれる
作業台。ここから色々なものが生まれる
—革製品に興味をもったのはなぜでしょうか
ほんとに子どもの頃から革が大好きでした。
あとは天然の素材ですよね。木もそうだし、天然素材の風合いが好きだったから、何となく革をさわるようになっていったのかなあ。
革が好きだったから、自分で気に入ったものを買っても、「ここもうちょっとこうだったらいいなあ」っていうのがあるじゃないですか。「ほしいものを自分の思うように作れたらいいなあ」と思ったのが革をやり始めたきっかけかな。

—いつからですか
20歳くらいからかなあ。レストランで働きながら遊び程度ですけどね。

―職業にしようと思ったのは
職業にしようと思ったのは25歳くらいかな。
趣味でやってる時も、
友達の先輩みたいな人が革のお店をやってたんです。
そこで僕が休みの日とか、そのお店が休みの日とかに技術を教えてもらってたりしてたんですよ。

―全然違う職種ですよね。ためらいはなかったんですか
そうですねー。どうですかねー。これだったらやれるなって。

―新しいことに挑戦することに抵抗を感じないタイプなんでしょうか
気になったことはやってみた方がいいじゃないですか。やってみないとわからないから。
実はレストランも21、2歳くらいのときに1回やめて、外国とか行ったりして。お金を貯めては3ヶ月どっか行くとか、1ヶ月どっか行くとかやってたんですよ。
それもやっぱり、気になったらやってみたいという性格なんでしょうね。

『otohaci』

革を切断するための機械
革を切断するための機械
―このお店の開店に向けて動き出したのはいつ頃ですか
25歳くらいのときから高円寺にいる亀田さんという先生の教室に通って、アルバイトしつつ勉強してて…。
こういうの作るところで働いたりもしてたんですけど、途中から自分の家でアトリエみたいなことをして注文受けて、仕事をしてました。
それが何年か続いて、ちゃんとお店を出したいなと思って。

―こちらのお店でも教室を開かれていますよね
はい。うちも開店してちょっと経ってから、もう6年くらいやってますね。
習いたい人はいると思うんですけど、なかなかこういう教室は少なかったので。教室をやると自分も勉強になるし、技術の向上にもつながると思いますね。

―自分で作るのと教えるのとではやはり難しさも違いますよね
自分の主観じゃなくて、誰がやってもわかるように理解してないと教えることは難しいと思いますね。
すごく難しいけど、生徒さんに教えることによって、自分の理解度も高まるというか、勉強になると思いますね。

―生徒さんはどんな方が多いんですか
すごくいろいろです、大学生みたいな方もいますし、男子も女子も。上は50代くらいのお父さんもお母さんもいます。

―神楽坂の方も?
近くの方もいらっしゃいますけど、ほんとに遠くの神奈川、千葉、埼玉あたりから通ってくださっている方もいます。

お客さんの顔を見て作る“オーダーメイド”

製作途中のジュエリーケース
製作途中のジュエリーケース
―不器用な私でも作れますか?
いきなりっていうのは難しいですけど、簡単な基本的なものから少しづつ上達していけるカリキュラムを組んでいるので、初心者の方も多いですよ。

―自分で作ったものを使えるっていいですよね
そうですね。それに自分で作ったものを家族や友達にプレゼントする人もいますよ。
うちの教室から独立した人も何人かいます。趣味でやりたいって人もいますし、仕事として考えてる人もいます。

―手づくりの良さはどういうところに
いろいろあるとおもうんですけど、お客さんの顔を見ながら作れることじゃないかな。
うちはお客さんと対面してデザインを決めたり、色を決めたり、革を決めたりします。直接お客さんと顔を見合わせてやってくので、お客さんは「こういうのほしいんだけど」って言えるし、僕も「こういうのはいかがですか」って提案できる。


何回も打ち合わせを重ねるんですね
結構話しますね。その過程、過程で「こういうのでいきしょうか」って提案もするし、革にステッチを合わせる時は、いろんな糸で縫ってみて「どれがいいですか」って見せています。

―そんなに細かいところまで!
そうですね、なるべく細かいところまでやりますね。
お客様もイメージが沸くと思うので。
使用する道具の数はかなりの多さ
使用する道具の数はかなりの多さ
―今まで作ったものですごく苦労したものはありますか
毎回何かしら困りますよ(笑)
お客様の要望に対してどうすればよりよくできるかなって、いつも困るところですよね。そこは簡単に作れたら作れたで面白くないし、お客さんの言ってることをなるべく理解して、「これでどうだ!」みたいなね(笑)
そういうふうに提案できる方が楽しいですよね。

―逆に今までお店をやっていてうれしかったのはどんなことですか
やっぱりお客さんに喜んでもらえるのが一番かな。
お客さんには何度も足を運んでもらいますし、待たせる期間もあるので。「できた!」って時に喜んでくれればそれがやっぱり一番嬉しいかな。自分もやったかいがあったなって。

―ふと思ったのですがこのお店の内装は
自分で考えました。
自分で壁を塗って、棚も作りました。

―なんでも作れてしまうんですね
僕の仕事は革の加工ですけど、ものによっては木で枠を作ったり、金属を加工したりもします。だから、木工や金属加工に関してもある程度知識があったり、作業できたりしないと仕事ができないんです。
お客さんもいろいろな要望をするから、「そこはうちの領分じゃない」とは言えないです。
―そのあたりもオーダーメイドの大変さでしょうか
大変だけど楽しいですよ。
金具も普通に売ってるのでは嫌っていう人もいるので、26、7歳の時、彫金やシルバーの加工とかアクセサリーの勉強をしてたこともあるんですよ。週に2回くらいかな、学校に通って。

―お客様の要望を受けて勉強し直すこともあるんですか
結構ありますね。でもそれが自分の知識とか経験になってきますし、自分の引き出しとして蓄積されてくので。

―もの作りをする上で心がけていることはなんですか
謙虚であることと、正直であることかな。
僕は毎日作っているわけだけど、お客さんからしたらうちから買うたった1つのものになるかもしれないわけだから、常に自分が今作れる最高のものを、自分が一番いいと思えるものを作りたいと思います。

店頭には鞄から手帳、ペン立てまで様々なものが並ぶ
店頭には鞄から手帳、ペン立てまで様々なものが並ぶ
オーダーメイドでは糸の色まで選べるとか
オーダーメイドでは糸の色まで選べるとか

簡単には作れないからこそ面白い。
そう、これは世界でひとつのオーダーメイド。
お客様と何度も膝を付き合わせ
丁寧に、丁寧に、
手縫いで想いをカタチに仕上げてゆく。
「常に自分が今作れる最高のものを」
今日も上村さんの元からまたひとつ、
永く愛される鞄がお客様の手に渡っていった。

しんじゅくノート学生記者 小林彩友美
otohaci
~オーダーメイド革鞄、革小物、教室~
住所:東京都千代田区富士見2-3-1 信幸ビル2階
電話番号/FAX:03-3263-3334
HP:http://www.otohaci.jp/
※2013年11月より神楽坂から上記の住所へ移転となりました。