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新宿ものづくりマイスター 技の名匠

【和生菓子製造】 井上 豪さん

平成26年度認定

2015/12/03

家族への愛情から生まれた健康志向のこだわりの和生菓子マイスター

和生菓子製造 井上豪さん
和生菓子製造 井上豪さん
1935年(昭和10年)創業、2015年で80周年を迎える 御菓子司 神楽坂梅花亭の4代目、井上豪さんをお訪ねしました。神楽坂はその昔の花街の雰囲気も残り、格式豊かな料亭から新宿区の特徴でもある国際色豊かな食事処が石畳みや路地のそこここに点在します。人気上昇中のオシャレな街です。その神楽坂で「安心、安全、観て楽しく、食べておいしい」こだわりの和菓子づくりを続けられています。

御菓子司 神楽坂梅花亭 4代目
1971年(昭和46年) 生まれ。
1994年(平成 6年) 家業である「神楽坂梅花亭」に従事。
2013年(平成25年) 国家検定「一級菓子製造技能」の免許を獲得。
2014年(平成26年) 全国和菓子協会「選・和菓子職」にて「優秀和菓子職」に認定。
2015年(平成27年)1月 新宿ものづくりマイスター「技の名匠」に認定。

祖父から和菓子作りを教えてもらい育ってきた

……お仕事の内容、この仕事に就いたきっかけをお教えてください。

 普段使いの季節の生菓子から茶席用の上生菓子、贈答用の焼き菓子などの和菓子を製造して販売しています。フレッシュ感を大切にするために、1階はガラス張りになっています。また、吟味した国産の素材を無添加で仕上げています。日持ちはしませんが、お客様には手作りの良さ、安心を理解いただき、それを聞いた方がまた買うという販売方法をとっています。

 祖父が始めた店で、父が早世し、叔父が養子に入り代を継ぎ、私が4代目になります。子供の頃から仕事場をうろうろし、工作とか絵を描いたりするのが好きで、ものづくりの職人になりたいと思っていました。高校ぐらいから土日は店で祖父から教えてもらい、父がいて母がいて僕がいるという環境でお手伝いをしながら育ってきました。美術大学に入り4年間油絵を習いました。店に就職してから8年間は、夜は絵を描き、昼間は和菓子を作るという二足の草鞋の生活をしてきました。
全国和菓子協会から優秀和菓子職と認定された「はさみ菊」の和生菓子と道具のハサミ
全国和菓子協会から優秀和菓子職と認定された「はさみ菊」の和生菓子と道具のハサミ

時代に合わせるも大切、帰っていく勇気も必要

……苦労されたこと、続けることができた理由、和生菓子製造の魅力などをお聴かせください。

 祖父は戦争でシベリアに抑留され、帰ってきては物資難の中、苦労して砂糖や小豆を調達したようです。それが効を奏して本物の和菓子が味わえると評判になりました。バブル時代は洋菓子も手掛けていましたが、作れば売れる時代が終わったとき、ものづくりの根本に戻ろうと、安心、安全、美しく、おいしい和菓子作りに専念しました。時代に合わせるも大切ですが、帰っていく勇気も必要だなという風に思っています。

 ものづくりに関しては、見たものを解釈して形にする、味も食べてイケるぞと確信を持って出す、それをお客様が美しい、おいしいと共感する。それがすごく嬉しいことで、一番の魅力だと思います。

 舌が麻痺してしまわないように、薄味で化学調味料を使わずに、舌がニュートラルでいられる状態にしたいねと家族で話をしています。自分の舌を日々試しながら食事をして、感覚を研ぎ澄ましてやってきたことがすごく大事なんじゃないかと思います。
球形の生地に細かくハサミを入れて、菊の花びらを一つひとつ作り上げる
球形の生地に細かくハサミを入れて、菊の花びらを一つひとつ作り上げる

神楽坂の文化の一翼を担い、お客様に応えたい

……マイスター認定された理由、新宿区でご活躍されていることについてお話しください。

 美的感覚は負けていないと自負しています。味の良さもお客様に認めていただいているという自信があります。マイスターに認定されて、歌舞伎座で実演ということになりました。舞台で新宿ものづくりマイスターと紹介いただき、とても嬉しく誇りに感じました。

 戦前に十二社で祖父が商売を始め、戦後60年間池袋にいて、10年前に神楽坂に移ってきました。ですから、新宿から出てまた新宿に戻ってきたことになります。新宿という東京都の中心、いわば日本の中心で活躍していることを、とても光栄で、それに負けないように頑張りたいと思っています。また、神楽坂は和の魅力とノスタルジィを味わえる都内でも数少ない場所だと思うのです。自分たちも和菓子で神楽坂の文化の一翼を担い、和を求めて来られる方に応えられる店になりたいと思います。
普段使いの和菓子から茶席用の上生菓子まで店舗にならぶ和菓子の数々
普段使いの和菓子から茶席用の上生菓子まで店舗にならぶ和菓子の数々

和菓子屋が少なくなっている時代に、独立させ新しい店を出せることを誇りに

……ご自身の希望、後輩に向けたメッセージなどがありましたらお聴かせください。

 和食が世界の無形文化財に選ばれ、東京オリンピックもあり、期待が高まっています。和菓子の魅力をもっと素直に表現できたらなと考えています。また、20代の弟子が6人いますが、和菓子屋が少なくなっている時代に、昨年、一昨年と2人を独立させて新しい店を出せることを誇りに思います。和菓子屋はもっと手軽にできるんだということも教えてきたい、この業界をもっともっと盛り上げていきたいと思っています。

 今は和菓子や季節の花という仕事に直結する絵を水彩や墨で描いています。造形は、見たものを頭のフィルターを通して手で形作るというのが基本と思うのですが、美術大学で学んだ「回路」が仕事に大変役立っています。また、茶道を4年前からやるようになりました。お茶の味を邪魔してはいけないという意識が高かったんですけども、今はどんどん挑戦していっても良いのではないかと思っています。
御菓子司 神楽坂梅花亭<br>奥は工房の様子が見えるガラス張りになっている。
御菓子司 神楽坂梅花亭
奥は工房の様子が見えるガラス張りになっている。


……美術大学で学ばれたココロを具現化する「回路」が形と味に転化されている手法に興味を持たせていただきましたが、「家族経営なので家族が続くことが大切。健康に注意した生活をしています」という言葉が大変印象に残りました。苦労されたお祖父様、若くして亡くなられたお父様、ご家族への尊敬と愛情が、健康志向の安心していただける本格的な和生菓子の根底に流れていると感じました。また、暖かい家庭環境の中で仕事を習得していった経験が、スタッフの方への芽を摘まないようにして伸ばしてあげたいという気持ちにつながっていると納得しました。これからも健康で美と味にこだわった和生菓子づくりを続けられることを期待しています。

しんじゅくノートでは、2010年に神楽坂梅花亭を取材させていただいております。こちらをご覧ください。
神楽坂梅花亭/井上豪さん (神楽坂の達人)

また、神楽坂の街の魅力、イベントなどの記事もございます。
神楽坂の魅力
市谷・神楽坂エリアのお花見スポット
第55回 黄葉さんぽに神楽坂界隈に行ってみよう
第79回 矢来能楽堂~新宿区矢来町~
第115回 神楽坂アートスクエア 2014
第118回 坂にお絵描き 2014 神楽坂
第120回 神楽坂まち舞台・大江戸めぐり2014
井上 豪 (いのうえ たけし) さん

業種: 和生菓子製造
店舗: 御菓子司 神楽坂梅花亭
住所: 〒162-0825 新宿区神楽坂6-15
TEL/FAX: 03-5228-0727
営業時間: 午前10時~午後8時
定休日: 不定
ホームページ: ⇒御菓子司 神楽坂梅花亭
写真・文 しんじゅくノート編集部 取材撮影 2015年11月5日

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