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新宿ものづくりマイスター 技の名匠

【紋章上絵・染色補正】 北川 幹雄さん

平成25年度認定

2015/07/15

卓越した確かな技術で着物を活かす、お手入れと紋のマイスター

紋章上絵・染色補正 北川幹雄さん
紋章上絵・染色補正 北川幹雄さん
 新宿区の神田川沿いの落合から神楽坂の一帯は着物関係の工房が集中しています。今回は、早稲田大学にほど近い早稲田鶴巻町で紋としみ抜きを専門とした幾久清(きくせい)を構える三代目のご主人、北川幹雄さんにお話をお聴きしました。

 「京都のしみ抜き屋で奉公していた祖父が明治の終わりごろに上京して、1919年(大正8年) に幾久清を創業した」とのこと。紋は北川さんの代から始まりました。工房のある早大通りは、欅(ケヤキ)並木に花海棠(ハナカイドウ)、花桃(ハナモモ)、皐月(サツキ)のある美しい通り。神楽坂へと通じる風情のある道筋です。

1951年(昭和26年) 新宿区早稲田鶴巻町で生まれる。
1973年(昭和48年) 早稲田大学商学部卒。「紋昌」にて紋章上絵修業を始める。
2013年(平成25年) 新宿ものづくりマイスター技の名匠認定。
幾久清三代目。新宿ものづくりマイスター「技の名匠」。一級染色補正士。

就職しようとしていたが、紋屋に修業に行く

……どのようなお仕事か、この仕事に就いたきっかけをお教えてください。

 紋章上絵(もんしょううわえ)、いわゆる、紋屋の仕事は、結婚式や卒業式などの冠婚葬祭や衣裳などの紋付の着物に紋を描き込む仕事です。紋抜き(紋の形に色を抜くこと)や色を補正することなどは、染色補正の仕事でもあるのですよ。染色補正(しみ抜き)は、染色の加工段階の補正もありますが、今はお母さんの振袖を娘に着させたいとか、カビで黄変している着物のしみ抜きなどの「お手入れ」の仕事が増えました。黄変を抜けば色が変わり色を再現するために地色を直したりと、高度な技術が必要とされる仕事です。きものは着用後早めに、お手入れをすることが必要です。カビや汗の黄変を防ぐことになり、それがきものを長持ちさせる秘訣となります。

 昭和40年代(~1974年)までは、日本橋三越デパート、結婚式の貸衣装、嫁入り道具の着物の誂えから依頼が入り、弟子もたくさんいて多忙でした。家はしみ抜きが本業で、外に頼んでいた紋の日限が合わなくなってきて自前でやることになりました。就職しようと商社や銀行を受けていたのですけど、継いでもらいわないと困ると言われて、昭和48年(1973年)から紋屋に修業に行きました。それこそ寝る間を惜しんで仕事しました。平成3年(1991年)に父が亡くなり、家業のしみ抜きもやることになり、40歳過ぎで染色補正の国家検定を受けました。
竹製のコンパス「分廻し」と極細の筆など紋章上絵の道具。
竹製のコンパス「分廻し」と極細の筆など紋章上絵の道具。

化学染料や撥水加工された着物は厄介だが納得できる仕事をしている

……なぜ続けることができたのでしょうか、苦労していることなどをお聴かせください。

 紋だけでなく、しみ抜きもやっていたから続けられました。今は、「家紋は何ですか?」と言われて、すっと答えられる人が少ない。お墓の写真を持ってきた人もいました。紋を間違っていれたお客さんがいて、頼み込まれて飛行機で行って修正してきたことがあります。現地で紋を抜いて、手描きで入れました。その時は感謝されました。

 化学染料や撥水加工された着物の紋入れやしみ抜きは厄介で制約もありますが、納得できる仕事をするようにしています。昔の呉服店の店員だったら知識も豊富でその場で説明して済むことが、説明不足から行き違いが生まれることがあります。その辺は苦労ですね。

 お客さんは、舞台に出る役者や踊り、お茶をやっている人、そんな人が多いですね。簡単なしみ抜きはクリーニング屋に出す方が安いよと言うのに、わざわざ持って来てくれます。
高度な技術に根気と集中力が要求される家紋の手描き作業。
高度な技術に根気と集中力が要求される家紋の手描き作業。

地下鉄もたくさんあり、家の回りをぐるぐる回って済んでしまう

……マイスター認定、新宿区でのご活躍されていることについてお話しください。

 マイスターに認定されて友達からは冷やかされましたよ。組合(新宿区染色協議会)の方でも、いろいろなイベント(染の小道や水元の再現など)で協力しています。

 神田川沿いは染色業が多い関係から、戦後、ここ早稲田鶴巻町に移ってきました。少なくなったとは言え同業者が近くにいるので便利です。地下鉄もたくさんあり主要な場所に30分で行きますよ。生まれも育ちも早稲田で、小中学校は歩いて3分、高校が7分、大学が8分、幼稚園が一番遠くて10分、修業先も5分くらいと、家の回りをぐるぐる回って済んでしまっています。家の前の早大通りは両端が突き当りで交通量も多くなく、グリーンベルトがあって神田川も近く、住むには良い場所です。
数千種類はあると言われる家紋の「家紋図鑑」(上)と江戸時代の武家の概要・家紋・旗頭などを表した「武鑑」(下)
数千種類はあると言われる家紋の「家紋図鑑」(上)と江戸時代の武家の概要・家紋・旗頭などを表した「武鑑」(下)

ゴルフ、テニス、フィットネス、暗渠歩きで楽しく健康維持

……これからのこと、ご趣味や凝っていることなどがありましたらお聴かせください。

 体力が続く限りやるつもりです。仕事は切れずにありますが、後を継ぐだけの仕事はなく、私の代で終わりです。私が入っている東京の組合でも、昔は70人くらい紋屋がいましたが、今は14人。跡継ぎがいるのは2軒で、一番若くて40代。いずれ紋屋は誰もいなくなると思います。

 ゴルフ、テニスが昔から好きで続けています。座っている仕事だものですから、なるべく外に出るようにしています。フィットネスは1998年から行き始めました。気持ち良く汗をかいて、そのあと一杯飲みに行く。若い学生もいて、前は息子の世代だったのが、今は孫の世代になって、LINEでつながっています。楽しく健康維持しています。

 ここ数年、暗渠(あんきょ)歩きをしているんですよ。今は暗渠になっていますが、わが家の近くを蟹川という川が流れていました。新宿御苑そばの大宗寺が蟹川の水源の一つといわれています。かつては早稲田田圃を潤し、神田川に合流していました。
学生時代からの友人が設計したというお洒落な建物
学生時代からの友人が設計したというお洒落な建物


……お話させていただいて気が付いたのは、記憶力抜群で頭の回転の速い方ということ。家業の伝来やいろいろなこと、和暦と西暦の年代変換もすらすらとご説明いただきました。また、ブッシュ元大統領が来日したとき、夫人を前に実演し、伝統技術や家紋と欧米の紋章の違いを通訳を介さずに英語で説明されたとのこと。まさに「仕事と生活の調和“ワーク・ライフ・バランス”」の達人。今後もお元気で一層のご活躍をお祈りします。
北川 幹雄 (きたがわ みきお) さん

業種: 紋章上絵・染色補正
工房: 幾久清(きくせい)
住所: 〒162-0041 新宿区早稲田鶴巻町521
TEL: 03-3202-0964 / FAX:03-3202-1074
営業: 午前10時~午後7時 (日曜定休)
ホームページ: ⇒有限会社 幾久清
写真・文 しんじゅくノート編集部 取材撮影 2015年7月2日

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