新宿ものづくりマイスター 技の名匠
東京手描友禅を広く伝える行動派の若手マイスター
職人でありながら、オープンカレッジ講師や地域でのイベント開催などでも大活躍の大澤学さん
まるで美術品のような友禅染の着物や帯をご覧になったことはありますか。染料がにじむのを防ぐ防染糊を利用しながら、職人の手により繊細な絵柄をひとつひとつ描いていく染めの技術を手描友禅といいます。
広く知られている京都の「京友禅」、北陸石川県の「加賀友禅」と並ぶ「東京手描友禅」は、江戸東京ならではの粋で洒落た感覚、モダンな色調が特徴です。
平成2年より父・大澤敏氏の経営する工房で繊細さと正確さを要求される友禅の技術と感性を研鑽。作品製作のほか友禅教室や文化服装学院オープンカレッジで染色の講義を担当し、地元落合の若手染色家たちと「落合ほたる」を結成し「染のまち落合スタンプラリー」を開催するなど、着物文化と染色業の普及に積極的に携わっている東京手描友禅の若手マイスター大澤学さんにお話をうかがいました。
きっかけは軽い気持ちの家業の手伝い
……手描友禅の仕事に就かれたきっかけをおきかせください。
自宅が工房でしたから、小学生の頃から跡継ぎと言われていました。高校時代に軽い気持ちのアルバイトで家業の手伝いをしたのが始まりで、気が付いたら東京手描友禅伝統工芸士の倉谷憲明師匠の元に3年ほど修業に行かせてもらいました。
今でもそうですが、伝統工芸の修業は徒弟制度が残っており、朝の掃除から始まり、師匠の仕事の準備をしながら、仕事の楽しさも教えてもらいました。今は慣れましたが、最初は座っているだけでも辛かった思い出があります。
仕上げの金箔の固着 細い線を一定の幅で均等に描くには、高度な技量が求められます。
ものづくりの魅力は思い通りにならないこと
……ものづくりの魅力とは何でしょうか。
手描友禅は一品一品が手描きなので、いつも同じとは限りません。下絵、糸目置き、地入れ、友禅挿し、糊置伏せ、引き染めと染色工程が進みます。染料がにじむのを防ぐ糸目置きひとつをとっても繊細で正確な技量が必要です。
加工途中のものはできあがりと全然違います。想像はついていても100%わかっているのではないのです。外注作業で糊や余分な染料を落として手元に戻ってくるまでドキドキします。綺麗に上がっていればうれしい。難しい、思い通りにならない、失敗することも含めて、できあがりを待つことは楽しいです。
友禅挿しの筆 小さな刷毛や筆で染料液を布地に加えます(左)
作品ごとに個性ある絵柄は、マイスターの技術によるもの(右)
新宿は日本有数の染色産業の地
……マイスターに認定されて変化したこと、新宿区でご活躍していることについておきかせください。
平成25年12月に認定されて約半年になります。新宿区の区報に載せてもらい、同級生のお母さんたちから、あの学ちゃんが立派になった偉くなったものだと言われました。
落合は染屋としてとても住みやすい町です。歩いて行ける、自転車で行ける範囲にいろいろな分業先があって便利です。それこそ持って行って、夕方までにやってという話ができる。日本でこれだけ染色関係の工房が密集している地域はここだけです。
新宿区には、手描友禅をはじめ、江戸小紋や江戸更紗などの染色業が10業種ほどありますが、染色業が新宿区の地場産業であることを知っている人は圧倒的に少ない。新宿区にも強力に推していただいて、多くの人に知っていただきたい。こういった伝統技術をなくしてはならないと思います。
竹棒の両端に針のついた「伸子(しんし)」で布地を伸ばして染色などを行います。
東京手描友禅の伝統を多くの人に伝えていきたい
……これからのこと、今後の希望などをおきかせください。
和装は非日常着となり、着る機会が少なくなり、伝統産業としては疲弊しています。しかも、東京手描友禅は30代から60代の女性が主な対象です。いろいろな物を見てセンスが高まっている、好みもさまざまな感性の高い女性たちに訴えていく難しさを感じています。
これだけ楽しめる仕事にめぐり逢えた自分は幸せです。手描友禅という伝統をなんとか後世に伝えて行きたい。そのために、オープンカレッジで染色講座を担当したり、工房で体験教室などを開いています。教室は月にのべ60人もいらっしゃることがある。手描友禅をやってみたいという女性も多いのです。少しでも伝統が伝わって欲しいと思います。
工房での友禅教室 トレースもできる透明な天板がついた机を使用します。
染の小道 出典作品「梅模様」
(開催 2014年2月28日~3月2日)
……「この伝統を多くの人に伝えたい」という若手マイスターの力強い言葉が印象的でした。ものづくりの伝統技法を継承し、現代に求められる高度な品質と琴線に触れる逸品を作り上げているのは、不断の技術の鍛錬と常に新しいことに目と耳を研ぎ澄ます努力の賜物でしょう。
工房での教室やオープンカレッジ、落合・中井を染め物で飾る
「染の小道」に参加するなどの普及活動も、不断の気持ちの糧になっているのではないかと感じました。
大澤 学 (おおさわ まなぶ)さん業種:染色業 東京手描友禅
工房:東京手描友禅工房 協美
住所:新宿区下落合4丁目6-17
電話:03-3954-3331
FAX:03-3954-3332
営業時間:9:00~18:00
ホームページ:
東京手描友禅工房協美 写真・文 しんじゅくノート編集部 取材撮影 2014年6月19日
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