1969年、新宿中央公園に青テントが出現。そのときは、反骨の唐十郎劇団が無許可で公演して騒ぎになったそうです。実は今回も唐十郎氏の流れを汲む「劇団唐ゼミ☆」が主催。名前の☆印がカワイクなったのか、ちゃんと許可もとり、しかも、新宿区後援のお墨付きまでもらい、青テントの特設舞台が設営されました。

こんな劇団の主宰ですから期待が高まります。そして、本を書いたのは映画監督の望月六郎氏。劇団唐ゼミ☆のホームページを拝見すると、苦しみ抜いてギリギリで台本ができたとか。(期待)の２乗ですね。

時代は現代。花屋に扮して援助交際の摘発を内偵する探偵町子と築地署の刑事たち。「君の名は」のテーマ曲が流れる中、待ち合わせはマチコとハルキの名前で、目印にスイートピーの花束を持つことに。

そこに旅行代理店で仕事の失敗から途方にくれた襟雄(エリオ)がフラフラと数寄屋橋公園を訪れる。援助交際の犯人に間違われ、あわや逮捕という所に、何故か噴水から中国人観光客のご一行様が登場。ナンヤカンヤで刑事たちは中国人観光客を案内するハメになり、襟雄は一難を逃れる。

悩める襟雄に救いの手を差し伸べたのが、なぜか襟雄を名前を知っていた在日中国人ツアーコンダクター。襟雄のどっちつかずの良い人ぶりに、日中の問題をブツケる。そして、顧客名簿と引き換えに襟雄が手配ミスした観光バス30台を用意してくれるという。襟雄のためだけでなく、二人のためにもなるからと言われ、顧客名簿を約束してしまう。

数寄屋橋後援にたむろする由宇仁(ユウジ)。実は在日朝鮮人4世で詐欺師。そこへ襟雄のために顧客名簿を持ち出した恋人 木挽(コビキ)が現れる。顧客名簿を狙う由宇仁。氏家真知子との出会いを信じる資産家 後宮春樹も絡んで、戦前戦後の昔話が始まり、祖父 終徒宜 (オトキ)の生き様が語られる。

木挽からまんまと顧客名簿を盗み出した由宇仁は、月島にある根城・もんじゃ屋「空蝉」(うつせみ)で、木挽の身体をむさぼる生活を送っている。アニメオタク木挽も、最初はコミックでは味わえない刺激に酔いしれるが、犯罪者に落ちた自分の将来に不安がいっぱいに。

そんな中、月島のもんじゃ屋制覇中のブロガーが来店。そして、在日中国人ツアーコンダクターこと三里迦(ミリカ)と襟雄が現れる。実は三里迦と由宇仁は夫婦で別居中。慰謝料替わりに顧客名簿を寄こせとバトルが始まる。中国人観光客を審判にした料理の鉄人「もんじゃバトル」に発展。築地署の刑事、探偵、ブロガーも、もんじゃの様にナイマゼになって大団円へと進む。

唐十郎流の異空間テント舞台

ありがとうございました。昨今の軽薄なヒーロー、派手なだけの映像表現とは大違い。複雑な人間模様と一見漂泊とした人物を生い立ちや人生観をきっちり描いた、濃く深みのある人間ドラマでした。

映画監督・望月六郎さんの苦心、劇団唐ゼミ☆代表中野敦史さんの演出、関係者の皆さんの協力、そして、もちろん、若い演者の皆さんの才能と努力のおかげで、すばらしい舞台を楽しませていただきました。

文章や映像では雰囲気が少し伝わるくらいです。ライブの生々しさ、迫力は伝えきれません。機会があれば、青テント、劇団唐ゼミ☆の公演に行ってみてくださいね。

劇団と巨匠映画監督による驚異のコラボレーション
劇団唐ゼミ☆×映画監督・望月六郎 特別合同公演『きみの罠』

劇作家・横浜国立大学教授だった唐十郎氏のゼミナールの門下生から発足した劇団「劇団唐ゼミ☆」と1995年『新・悲しきヒットマン』で日本映画プロフェッショナル大賞ベスト1＆監督賞を受賞した映画監督 望月六郎氏との共同制作作品。かっての名作「君の名は」をベースに、 国際都市TOKYOの最もアブなくアツい騙し「愛」を公演。望月氏の作家性と唐ゼミ☆のワイルドなライブ感がぶつかり合う、現代日本の闇と光をあぶり出す現代劇。

日時 2015年11月12日(木)～11月16日(月) 16:00開演
場所 新宿中央公園 水の広場 特設劇場 (新宿区西新宿) ⇒新宿中央公園(公式ホームページ)
料金 前売／3,200円 当日／3,600円 (新宿区民割引・平日割引・3人以上予約割引あり)
主催 劇団唐ゼミ☆ ⇒公式ホームページ
後援 新宿区／歌舞伎町タウン・マネージメント／歌舞伎町商店街振興組合
協力 新宿中央公園パークアップ共同体、他


※掲載内容は2015年11月に開催されたものです。
※詳細は公式ホームページでご確認ください。