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神楽坂の達人

粋まち/代表取締役 日置圭子さん

2011/04/21

味わい深い料亭、石畳の路地、花柳界の存在。そして想像以上にインターナショナルなまち、神楽坂。暮らしになじみ息づいている神楽坂の文化。今、神楽坂の文化が発信されています。

伝統文化とモダンアートをつなぎ、人と人をむすぶ

おとな粋文化に魅せられて

日置さんのお気に入りの景色<br>新見附橋から見た神楽坂下のカナルカフェ
日置さんのお気に入りの景色
新見附橋から見た神楽坂下のカナルカフェ
「私が好きな神楽坂は、人々の暮らしの中に文化、芸術、芸能がなじみ、まちの中に質の高い文化があふれているところ」。

神楽坂の魅力を伝えて下さるのは、歴史ある神楽坂のまちから発信される文化を色々な形で、人々に届ける文化事業プロデューサーである日置圭子さん。「株式会社粋まち」の代表取締役でいらっしゃいます。

日置さんが、神楽坂に住むようになったのは、2000年から。横浜生まれで横浜育ちの日置さんが、神楽坂に住み始めて、最初に感じたのは、「神楽坂と横浜は気質が似ている。成熟した大人のまち」。

神楽坂の路地や坂の多い風景、多くのフランス人が暮らす国際色豊かなまち、そして、新鋭アーティストが集う自由さからも横浜に似た開放的な香りをかぎとったそうです。

神楽坂の歴史の核となる花柳界の持つ粋と艶

日置さんが、神楽坂のまちづくりや文化支援事業に関わるようになったきっかけは、「NPO法人 粋なまちづくり倶楽部」の一員になられた事。神楽坂に住み始めて3年経った頃でした。

「粋なまちづくり倶楽部」は、失われつつある「和のまち」「粋なまち」が、今後、幾世代にも亘り引き継がれるための景観保全や文化・観光支援など、まちづくりに関する諸事業を実施しています。

その中で日置さんは、神楽坂が花柳界という粋で艶のある特異な文化を持つまちとして、接待だけでなく、一般の方にも是非伝承させていく価値があると感じられました。また料亭や芸者さんが神楽坂で生業(なりわい)として暮らしている空気感や魅力を文化として発信させたいと思ったそうです。
文化企画のアイディアがいっぱいの日置さん
文化企画のアイディアがいっぱいの日置さん
風情のある浴衣姿で神楽坂をご案内する「ゆかたでコンシェルジェ」
風情のある浴衣姿で神楽坂をご案内する「ゆかたでコンシェルジェ」

神楽坂の「和」と「粋」を感じてもらうための企画

「粋なまちづくり倶楽部」が、商店会主催の夏の風物詩「神楽坂まつり」の中で神楽坂らしい粋なイベントを、と企画したのが『ゆかたでコンシェルジェ』。ボランティアたちのアイディアから生まれました。

夜の路地裏を案内付きで歩けるなんて、江戸情緒いっぱい。路地裏では、三味線の音が聞こえたり、芸者さんとすれ違ったりと、とても雰囲気があって、今も『神楽坂まつり』で行われている人気の高いガイドツアーです。

情緒や礼儀といった日本の大切な文化を守り続けてきた老舗や料亭。ここ数年、江戸・明治時代からの老舗や料亭が次々姿を消しつつあります。神楽坂で生まれた粋な文化、心意気。花柳界が伝えてきた“おもてなしの心”を次世代に伝えるため、多くの方に花柳界を知り親しんでいただくために、2006年から3年にわたり行われた連続講座『花柳界入門』。この連続講座は、花柳界の応援プロジェクトでもあるそうです。

日置さんはこれら様々な企画に関わりながら、神楽坂のまちづくりの文化発信をおこなっています。

万華鏡のような神楽坂文化を届ける

『神楽坂まち飛びフェスタ』は親子で参加できます!<br>アート企画『坂にお絵描き』
『神楽坂まち飛びフェスタ』は親子で参加できます!
アート企画『坂にお絵描き』
日置さんは、「粋なまちづくり倶楽部」の文化支援事業と並行され、神楽坂発の文化フェスタである『神楽坂まち飛びフェスタ』の実行委員長も務めていらっしゃいます。“まち飛びフェスタ”は、伝統芸能から現代アートまで多彩な文化を一年に一度交差させた、神楽坂らしさを継承する、市民ボランティアによるまちの手づくり文化祭です。

天高くさわやかな秋の2週間行われるそうですが、なんと80を超える団体が集い、展示や公演が行われます。700mの坂道がキャンパスになる、『坂にお絵描き』やパリで約100年続く伝統の『コース・ド・ギャルソン』を日仏交流の地である神楽坂で行う人気の高いイベント『神楽坂ギャルソンレース』。

そして日置さんが企画した「東京神楽坂組合」の見番で行われる『お座敷遊び入門講座』と盛りだくさん。

神楽坂の様々な文化をまるで万華鏡の中をのぞき込む様に色々な角度から楽しめる文化フェスタです。
これまでに開催4回を数えるパリのエスプリも感じられる『神楽坂ギャルソンレース』
これまでに開催4回を数えるパリのエスプリも感じられる『神楽坂ギャルソンレース』
見番で気軽に江戸情緒を堪能できる『お座敷遊び入門講座』
見番で気軽に江戸情緒を堪能できる『お座敷遊び入門講座』

珠玉の文化・芸術を神楽坂から発信し、羅針盤となり、人と人をつなぐ

「日本人が、日本を再発見し、その文化の価値に気づき継承することはとても大切なこと」と語る日置さん
「日本人が、日本を再発見し、その文化の価値に気づき継承することはとても大切なこと」と語る日置さん
まちのイベントの理想形の『神楽坂まち飛びフェスタ』の実行委員長を務める内に、能楽師、舞踊家、邦楽演奏家、演芸など色々な伝統芸能に携わる方々が神楽坂界隈に暮らされている事もあり、多くの方と交流が深まったそうです。またたまたま神楽坂のお店で知り合った方が、有名なアーティストだったりと、神楽坂に集う人々から織りなされる文化は、珠玉の文化である事を再認識されました。

日置さんは、極上の伝統芸能やモダンアートをプロデュースされ、神楽坂を愛する芸能や芸術の達人達をつなぎ、羅針盤の役目を果たそうと決意されます。2007年に株式会社粋まちを立ち上げられたのです。

人間国宝に指定される方などの極上の伝統芸能を歴史と格式ある『矢来能楽堂』の舞台に集めた『神楽坂伝統芸能』。それと同時に、漱石も寄席通いを楽しんだ庶民芸能のまち神楽坂の伝統を受け継ぐ、毘沙門天などで行われる『神楽坂落語まつり』。

神楽坂の芸能、芸術、演芸のプロ、まさに神楽坂の粋(すい)を集めた演目。粋まちの企画運営によるものです。

現代と江戸文化のクロスロード

神楽坂の文化を、まちづくりから発信されている日置さんに神楽坂お薦めポイントを伺いました。「神楽坂を歩いてほしいです。老若男女、趣味、興味を問わず、お気に入りの場所を見つけられます」と、にっこり微笑まれました。

確かに裏の路地は複雑に入り組んでいて、次にどんな風景が見えるか、わからないミステリアスなまち。

「神楽坂は、まちの中にコミュニティがあり、地域が誇りに思い育んできた文化が魅力。芸者さんが通う見番の向かいにフランスのカフェレストランがあったりするのが神楽坂的」。
神楽坂の芸者さんのお稽古場もある、東京神楽坂組合の見番
神楽坂の芸者さんのお稽古場もある、東京神楽坂組合の見番
見番の正面にある『フレンチレストラン』和と洋の文化の出会い
見番の正面にある『フレンチレストラン』和と洋の文化の出会い
神楽坂通りの裏道にある知る人ぞ知る銭湯「熱海湯」
神楽坂通りの裏道にある知る人ぞ知る銭湯「熱海湯」
銭湯や八百屋さんの並ぶ中にイタリアンレストランも開いている『小栗横町』
銭湯や八百屋さんの並ぶ中にイタリアンレストランも開いている『小栗横町』

取材を終えて

神楽坂を愛し守っていこうと思っている日置さんの気持ちが伝わってきました。
「住んで楽しいまち」と話される日置さん。お風呂屋さんや八百屋さんやお豆腐屋さんの並びに粋な小料理屋さんがあったり、イタリアンのお店があったり、文化が暮らしに根付いている神楽坂。だからこそ人々を魅了し続けるのかもしれません。

しんじゅくノート区民スタッフ:山本はるの