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新宿ものづくりマイスター 技の名匠

【活版印刷】 佐々木 精一さん

平成27年度認定

2017/03/08

創業百年の老舗で活字の鋳造から印刷まで一手にこなす活版印刷のマイスター

活版印刷 佐々木精一さん
活版印刷 佐々木精一さん
 新宿区榎町で創業100年を迎える有限会社佐々木活字店の三代目店主、佐々木精一さんをお訪ねしました。19歳で仕事に就き、2017年(平成29年)で76歳。57年間、活版印刷一筋に活字の鋳造、文選、植字、印刷に励まれています。また、この場所は牛込とも呼ばれ新宿区の北東部に位置し、新宿区の地場産業の一つである印刷業が集中していました。今でも印刷関係の会社が多く残っています。また、近くには文豪夏目漱石ゆかりの地もあります。

佐々木活版製造所 三代目店主
1941年(昭和16年) 生まれ
1960年(昭和35年) 19歳より就業
2011年(平成23年) 佐々木活字店が新宿区の地域文化財に認定
2015年(平成27年) 新宿ものづくりマイスター「技の名匠」に認定

仕事に就く前は野球に夢中だった。

……どのようなお仕事か、この仕事に就いたきっかけを教えてください。

 活版印刷とは昔ながらの活字を使った印刷です。道具も古いままです。佐々木活版製造所は1917年(大正6年)に祖父 佐々木巳之八 が創業しました。2017年で100年を迎えます。創業当時は活字の鋳造と販売を行っていました。昭和50年代から活版印刷も始めました。現在、印刷は私が、活字の鋳造は息子が中心に行っています。書体や大きさの異なる約700万文字以上の活字を所有しています。大きな活字は製造しておらず、在庫限りで販売しています。

 私で三代目になります。小さいときから、この仕事をやるのだと言われて育ってきたので抵抗はありませんでした。19歳からこの道に入りました。それまでは野球に夢中になっていました。小学校のとき、少し手伝った記憶はありますが、それまで修業はしていません。仕事の内容は見知っていたので、それほど苦労はしませんでした。
活版印刷機(DELLMAX 黒沢印刷精機)を操作する佐々木さん
活版印刷機(DELLMAX 黒沢印刷精機)を操作する佐々木さん

負けないところは、仕事を丁寧にやること。

……苦労されたこと、続けることができた理由などをお聞かせください。

 お客さんに喜んでもらえれば、それで良いと心がけています。活版は斜陽産業で仕事が減ってしまいました。それが一番の苦労ですね。需要は狭いけれど、他の方が辞めていくので、やっていけています。活版印刷は始めた頃から担当しています。印刷技術を学ぶのに苦労しました。基本は独学で印刷屋から教わりながら、たくさん失敗して、仕事を覚えてきました。色物の印刷は、思った色がでないことが多いのですよ。色指定されるのですが、温度、材質の違いなどで簡単には出ない。それを何とか出そうと苦労しています。活版の機械は今は製造されていません。使用していない古い機械から部品を融通して自分たちで修理して使っています。

 負けないところは、仕事を丁寧にやることですかね。自分に油断せずにお客様の希望を叶えること、そうすれば自ずと良い仕事ができると思います。たまにですが、「活字じゃないと」と言ってくれるお客さんもいます。また、お客さんから「良いものができました」と感謝の電話がかかってくることもあります。本当にうれしいですね。本当は自分の代で閉めようと思っていました。息子が大正時代から続いている伝統を無くしたくないと言ってくれたので頑張っています。
活字の棚「すだれケース」に整然と並ぶ活字
活字の棚「すだれケース」に整然と並ぶ活字

地場産業の印刷に理解があり仕事上有利な場所。

……マイスターに認定された理由、認定されて変化したこと、新宿区でご活躍されていることについてお話しください。

 マイスターに認定された理由は、自分でもわかりません。創業以来長く仕事を続けていることでしょうか。認定されて近所の人から区内報に載っていたと言われたことがあります。認定後も変わっていないと思います。淡々と仕事をこなしています。仕事は私一人ではできません。息子やスタッフが一生懸命やってくれているからできています。

 会社は創業から取引先のそばのこの場所です。印刷会社の数は減ったものの、印刷は新宿の地場産業ですから関係会社が集まっています。煙とか騒音に注意していますが、地域の人たちは印刷に理解があり、仕事上有利な場所です。また、消防団に入っているので地域の防災のことに関心を持っています。
きちんと整備され今でも現役の自動活字鋳造機(八光活字鋳造製作所)
きちんと整備され今でも現役の自動活字鋳造機(八光活字鋳造製作所)

76歳 まだこれから、まだまだやります。

……ご自身の希望、後輩に向けたメッセージなどがございましたらお聞かせください。

 2017年で76歳になります。まだこれから、まだまだやりますよ。息子には自分の思う通りにやってもらいたい。自分で機械を直すからすごいなと思っています。本人も頑張ってやってくれているので、何も言うことはありません。

 町会の副会長をやっていて、町内の人と月1回くらいゴルフに行っています。町内ゴルフコンペにも毎回出ています。また、地元の消防少年団の団長を頼まれて活動していますが子ども相手に楽しいです。ずいぶん昔のことになりますが、息子がリトルリーグに入っているとき、10年間コーチをやっていました。機会があれば、少年野球の監督もやってみても良いかなと思っています。
有限会社 佐々木活字店
有限会社 佐々木活字店


……佐々木さんからはそれほど苦労はしていないというお話。仕事の苦労は当たり前、苦労とは思わないという昔気質の無口な方でした。息子さんに対しても口数が少ないそうで、聞けば佐々木さんのお父さんも同様の方だそうです。また、かつて息子さんの所属するリトルリーグのコーチをやったり、消防少年団の団長を引き受けたりと、言葉よりも行動することを好まれるようです。「率先躬行」(そっせんきゅうこう)、つまり「人の先に立って、自ら実践すること」が家訓と理解しました。ついつい口出ししてしまう父たるわが身と引き比べてしまいました。なお、ゴルフはなかなかの腕前とのこと。野球で獲得したた身体能力でゴルフも上達されたのでしょうか。

 プリンタによる印字と異なり、いかにも「活字でプレスした」という印象が残る活版印刷。活版に興味のある方は、ホームページやfacebookをご覧になると良いでしょう。
佐々木 精一 (ささき せいいち) さん

業種: 活版印刷
事業所: 有限会社佐々木活字店
営業時間: 9:00~18:00
定休日: 土、日、祝日
住所: 〒162-0806 東京都新宿区榎町 75
電話: 03-3260-2471
ホームページ: ⇒有限会社佐々木活字店
写真・文 しんじゅくノート編集部 取材撮影 2017年1月19日

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