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新宿ものづくりマイスター 技の名匠

【印章彫刻】 岡本 尚也さん(号:尚山)

平成27年度認定

2016/11/02

自然の造形美を師として精進を重ねる“印鑑を彫るため”に生まれてきたマイスター

印章彫刻 岡本尚也 さん
印章彫刻 岡本尚也 さん
 僅か4年余りの修業で印鑑彫刻技術を習得し、全国技術大会で優勝した天才肌の岡本尚也さんを訪ね、曙橋の店舗にお邪魔しました。本物志向の魂は実用印製作に留まることなく篆刻学にも足を踏み入れ2度目の文部科学大臣賞を受賞しています。学生時代に始めた東北の里山探訪で目の当たりにした自然造形、機能美に感化され、さらに古典の正統派の「尚山流印章彫刻」を完成させました。ちなみに尚山はご本人の名前の一字と自然の神を意味する山神から名づけられたといいます。岡本さんの作る印章は優美さ、力強さだけでなく捺印性の良さ、優れた耐久性、偽造の難しさでもでも注目を集めているそうです。

1965年(昭和40年) 生まれ
1985年(昭和60年) 印章彫刻業に従事。松崎秀碩師、小川瑞雲師に師事
1989年(平成元年) 全国印章技術大競技会で優勝。史上最年少で「労働大臣賞」を受賞
1992年(平成4年) 独立
1994年(平成6年) 新宿曙橋に「本格印章専門店 岡本印房」を開店
2008年(平成20年) 篆刻において内藤富卿氏に師事
2013年(平成25年) 陸前高田市「奇跡の一本松」で同市の公印を作るプロジェクトに印鑑彫刻師に選任
2015年(平成27年) 新宿ものづくりマイスター「技の名匠」に認定

受賞歴
全国印章技術大競技会 労働大臣賞
全国印章技術大競技会 最高金賞
全日本印業組合連合会 技術競技会 篆刻部門 文部科学大臣賞
NHK書道展 最高賞 文部科学大臣賞

修業時代は月2万円の小遣いだけで雑用係専門。なかなか仕事をさせてもらえなかった。

……どのようなお仕事か、この仕事に就いたきっかけを教えてください。

 一から手作りの印章彫刻、つまり世界中にたった一つしかない唯一無二の印鑑を作っています。今では多くの印章店が職人に任せることなく機械化してしまったので手彫り印鑑自体が大変貴重だと思います。学生時代は無医村の現状を報道で知ったのがきっかけで医学の道を目指していましたが結局は断念。その頃に出会った芸術肌の家内の影響と親戚の勧めで印章彫刻師を目指すことになりました。時代はバブル一色。騒がしい世間と隔絶した静寂な中での技術修業は人生観をも一変させ、その後の生き方をもはっきりと決定づけることになりました。2人の素晴らしい師匠に出会い、通常一人前になるのに確実に10年は要するといわれる技術習得を4年足らずでものにし、その後、史上最年少で全国大会優勝。労働大臣賞を獲得しました。この記録はいまだに破られていません。

 実際、師匠のもとでの修業はトイレ掃除、机の磨きこみや整理整頓などの雑用が主、仕事は中々やらせてもらえませんでしたが師匠不在の時に仕事を覗き込んだりして少しでも早く一人前になろうと懸命な日々を過ごしました。今思えば一見回り道に見える雑用こそが一番の近道だったとはっきり言えます。師匠は背中で仕事に対する心構えを教えていたんだと思います。2人目の師匠の所では仕事に飢えている私の本心を見抜かれ、最初から最高級品の彫刻全般を任せてもらえました。乾いた砂に水がしみ込むように技術をものにしていったと思います。
数ある逸品の中から篆刻(てんこく)作品の一例
数ある逸品の中から篆刻(てんこく)作品の一例

良いものは手間と時間を頂かなければ出来ないという我儘を理解してくれるお客様に感謝

……苦労されたこと、続けることができた理由などをお聞かせください。

 スピードと安さをどこまでも求める世の中の風潮に対して、良いものを作り上げるのには手間と時間を要するということをお客様にご納得理解頂くのに大変苦労しました。仕上がりにこだわるあまり納期が遅れがちで叱られたことも多々ありました。しかし出来上がった印鑑を手に取ったお客様の笑顔を見ると、それまでの苦労も吹き飛んでしまいます。本当に良いものは簡単には産み出せない、時間が必要であるという作り手の我儘を聞いてくれるお客様には本当に感謝しています。
印章を彫刻する岡本さん (写真提供: 岡本尚也氏)
印章を彫刻する岡本さん (写真提供: 岡本尚也氏)

この場所で商売させていただき、ありがたく思います

……マイスターに認定された理由、認定されて変化したこと、新宿区でご活躍されていることについてお話し下さい。

 新宿ものづくりマイスターの認定は愚直に黙々と仕事をしてきたことが理由かなと思っています。メディアへの露出は極力避け、ホームページ発信だけにとどめて口コミだけを頼り仕事をしてきました。認定のご連絡を頂戴したときには一段と襟を正して、良いものを作らなければならないと強く思いました。また新宿区が染色業を地場産業にしていることを知り、手作りのぬくもりを愛する者としてうれしく思います。
岡本印房店舗の様子
岡本印房店舗の様子

趣味は自然の中の造形探し 夜明け前の瞬間にインスパイア

……ご自身の希望、後輩に向けたメッセージなどがございましたらお聞かせください。

 先人たちがつくりあげたもの、自然が織りなす造形の本質を私を媒介にして皆様にお届けしたい、もっと自然と向き合い何時までも朽ちない本物を作っていきたいと思っています。若い人たちも自然豊かな場所になるべく多く足を運び、色々なものを感じ取り、そして自身の中に「気」として取り入れてほしい。

 携わった仕事も手にしたモノも短い時間の中では本当の良さが見えてきません。長く付き合い、手元に置くことで本当の良さが感じられ人生をも充実してくると思います。仕事はどれだけ精進できるか、瓢箪は二つの入り口がある、最初は簡単にスポッと入れるけれども、窄まった所で引っかかる、そこを超えると広い大海原に出られる。仕事も人生も一緒、私の師匠の言葉です。

 趣味はもっぱら自然の造形探しに明け暮れています。たとえば富士山、頂上制覇も良いですが、是非、夜明け前の冬の富士山を少し離れたところから見て欲しい。夜明け前に見せる瞬間の山肌はすごい。インスパイアされます。
左の写真は独立したころの岡本さん
左の写真は独立したころの岡本さん


……何事も一生懸命。修業は厳しかったけれども、修練に明け暮れた時間は何物にも代えがたいという言葉からも努力を重ね真理本質を求めて邁進することが、氏のエネルギーの源泉であることが覗えます。インタビューでは途中何人ものお客様の来訪がありましたが、店舗を開店した当時はバブル崩壊時期と重なり経営的に大変ご苦労があったようです。

 美術系に詳しい奥様とは医学の道を目指していたころに出会われたそうで、お2人が睦まじく影響しあいながらお仕事されている姿を垣間見ることができました。奥様がホームページで書かれた「前世はきっと修験者」の言葉に自然と頷けます。「修業」は「修行」で、悟りを求めた実践だったのかも知れません。店舗のある「アケボノ」は「夜明け」の表現の一つ。これも何かの啓示かもしれません。

 インタビューでは色々なお話をお聞きしましたが文字数の関係でかなりの部分を割愛させていただまました。
本格印章彫刻専門店「岡本印房」
本格印章彫刻専門店「岡本印房」
岡本 尚也 (おかもと なおや) さん
(号:尚山)


業種: 印章彫刻
事業所: 岡本印房
営業日: 月曜日~木曜日、日曜日(予約のみ) (金曜・土曜・祝祭日はお休み)
※詳しくはホームページでご確認ください。
住所: 〒162-0065 東京都新宿区住吉町1-10
電話: 03-3353-2265
ホームページ: ⇒本格印章彫刻専門店「岡本印房」
写真・文 しんじゅくノート編集部 取材撮影 2016年9月21日

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