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新宿ものづくりマイスター 技の名匠

【製本】 渡邊 博之さん

平成25年度認定

2014/07/04

伝統の和綴じ製本技術にこだわり続けるマイスター

和装本の技を活かして、手作業で難しい注文にも応えてくれる和綴じ製本職人の渡邊博之さん
和装本の技を活かして、手作業で難しい注文にも応えてくれる和綴じ製本職人の渡邊博之さん
 日本古来の本を和本、あるいは和装本と言います。仏教の経本や古典芸能の教本、あるいは、博物館で和歌や書の古書、巻物を見ることがあるかも知れません。和本は和紙を二つ折にし、本の背側を糸で綴じる「和綴じ製本」が代表的なものです。明治時代以前は和本が当たり前だったのですが、今では機械化により大量生産された洋本が一般的になってしまいました。

 しかし、今も手作業による和綴じ製本の技を守り続けるマイスターがいます。和綴じの魅力に取りつかれ、後進の育成にも余念がなく、技術の継承とレベルアップにチャレンジを続ける渡邊博之さんにお話をお伺いしました。

伝統的な技術を守り継承しながら、新しいことにもチャレンジを続ける

……製本という仕事に就かれたきっかけ、苦労、続けることができた理由をおきかせください。

 父が博勝堂を興し、長男だった私は乳呑み児のときから製本の中で育ってきました。大学を出て印刷畑の会社で5年ほど修業し、父の会社に入りました。家系としては製本業を100年続けており、私で4代目になります。

 バブル景気の前くらいから人材確保に苦労しました。製本はイメージ的に花形産業ではないので、若者が来ない時期が続き、障がい者採用やベトナムからの研修生受け入れもしています。今では新卒の応募が結構集まるようになりました。

 和本の需要は年々少なくなり、同業者は機械化を進めています。極端にいうと手作業をやめてしまい、刷毛ひとつ使えない製本屋が増えました。私たちはかたくなに伝統を守り、機械ではできないものを職人の手で加工しています。それが、今、脚光を浴びている状態だと思っています。

 伝統的な手作業の技術と経験を基礎に、新しい素材やアイディアを組み合わて、和綴じ製本の継承とレベルアップを続けています。新しいものにチャレンジし、新しい引き出しができる。また次にチャレンジし、次の新しい引き出しができてくる。自分自身でも自分の中にこんな引き出しがあったのかと驚くことがあります。
和本の表紙のり付け作業
和本の表紙のり付け作業

製本は人を感動させるものづくり

……マイスターに認定されて変化したこと、ものづくりの魅力とは何でしょうか。

 次のマイスターを育てていこうという使命感がでてきました。一緒に働いている人たちもマイスターになることを意識しています。私も次の高いレベルを目指すから、あなたたちもマイスターになって欲しいと思うようになりました。

 平面に印刷されたものをいろいろな仕掛けで立体化するのが製本です。本を単なる文字の集まりと捉えれば、材質にこだわり、手間のかかる針と糸で綴じる必要はありません。本を手に取って風合いを感じる、人を感動させる本を作る、それが製本というものづくりの魅力だと思います。私たちが作っている和本は特にそうです。何年かすると本が自分の体になじんでくる。我ながら良いものを作ったと感動することがあります。

この場所にあるから仕事につながる

……新宿区でご活躍していることについておきかせください。

 新宿区は印刷、製本、染色が地場産業です。昔から飯田橋から早稲田にかけて印刷業が密集し、最盛期には道路にまで印刷物が積み上げられていました。製本もその傍で発展してきたのだと思います。交通にも便利なこの場所にあるからこそ、お客さんに気軽に来ていただけ、仕事につながっています。

 地場産業の発展に貢献した企業として、平成22年度には新宿活き活き経営賞の「地域貢献賞」をいただきました。新宿区の「ふれあいフェスタ」では製本組合として和綴じの教室をやっています。また、東京製本高等技術専門校で校長と講師を務め、後進の育成にも関わっています。
和本・経本・朱印帳・折本・函と帙などの和綴じ本の数々
和本・経本・朱印帳・折本・函と帙などの和綴じ本の数々

後進が一人前になって初めて本物の職人

……これからのこと、今後の希望や後継者に向けたメッセージなどをおきかせください。

 ものづくりは、一朝一夕にはできません。難しい注文にもチャレンジして完成させ、お客様によろこんでいただいていますが、もっといろいろなことができたのではないかと、満足できないこともあります。いろいろなことにチャレンジして、あきらめずに続けていき、自分の中の引き出しを増やしていきたいと思います。

 職人は手先だけの技術でなく、人としての心の豊かさも含めて職人だと教えています。知らない世界に入り、知ってわかるようになり、できるようになる。こんどは教えるようになり、教えた人が育ち一人前になって初めて本物の職人。後進が一人前に育った時、職人を続けて良かったと感じるものだと思います。
四つ目大和綴じ 仕上げ作業
四つ目大和綴じ 仕上げ作業


……営業を担当する息子さん(専務)に「自分に『できない』と言わせてみろ」と言うほど、困難な仕事にもチャレンジ精神旺盛な渡邊さん。これは自身の技術に対する自負だけでなく、むしろ挑戦を続けることが会社の維持成長と後進の育成に必要だと信じる気持ちから発せられた言葉だと思いました。自分自身と後継者へ叱咤激励する師と父親の姿を見たように思えます。

 新しい本に出合ったときの感動、時が経ち改めて読んだときに知る自己の変化。電子書籍では味わうことが難しい、手に取り、頁をめくることができる「形のある本」という文化を、もう一度見直すことができたインタビューでした。
渡邊 博之(わたなべ ひろゆき)さん
業種:製本業
工房:株式会社博勝堂
住所:新宿区西五軒町9-1
電話:03-3269-5248(代表)
FAX:03-3269-4578
営業:月曜~金曜 営業/土曜 不定休/日曜祝日 定休
ホームページ:和洋美術特殊製本 株式会社博勝堂
写真・文 しんじゅくノート編集部 取材撮影 2014年6月25日

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